大きく育った卵胞が、実は排卵していないことがあります
卵胞という卵子が入っている袋が大きくなっていって、2cmを超えたくらいで排卵します。
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卵胞が大きくなって、その後基礎体温が高くなれば、ちゃんと排卵していると考えられるので一安心です。
ところが、卵胞が2cm以上の大きさに育ったのに、実際には排卵していないことがあります。
黄体化未破裂卵胞症候群です。
luteinizing unruptured follicle syndrome、最初の3つの頭文字からLUF:ルフと呼ばれています。
聞いたことないし、なんか難しそうな名前ですよね。わかりやすく解説したいと思います。
黄体化未破裂卵胞症候群ってどういうこと?
正常な排卵
ル フ
上の図のように、自然排卵の場合は卵胞の大きさが2cmを超えたくらいで破れて中の卵子が排卵します。排卵した卵胞は黄体になって黄体ホルモンを作ります。すると黄体ホルモンの影響で基礎体温が高くなります。
普通なら、黄体ホルモンが出て基礎体温が高くなっていたら排卵したと考えることができます。
黄体化未破裂卵胞症候群というのは、黄体ホルモンが出て基礎体温が高くなっているのに、実は排卵していなかったという状態です。
卵胞が破れなくて卵子が中に閉じ込められたままで、排卵が起きていません。そのまま黄体になるで、黄体ホルモンはちゃんと出て基礎体温は高くなります。
なので基礎体温だけでは黄体化未破裂卵胞症候群を診断することはできません。
黄体化未破裂卵胞症候群を診断するには実際に排卵しているかどうか、すなわち卵胞がつぶれているかを超音波で確認する必要があります。
自然の排卵なら基礎体温が上がってから2~3日目に超音波をして、卵胞がつぶれているのを確認します。HCGを注射して排卵を引き起こす場合は、HCGを注射した3~4日後に超音波をします。
排卵してから時間がたつと黄体嚢胞という黄体の中に水が貯まった袋ができることがあって、これと破れずに残った卵胞の区別がつきにくくなることがあります。
卵胞が破れないなんてことしょっちゅうあるの?
ふつうの人でも、5~10%で卵胞が破れない時があると言われています。みなさんも排卵の10回に1回は卵胞が破れていないかもしれません。
不妊症の人の場合は、5~15%と報告によって差がありますが、確率は高くなると言われています。
クロミッドで排卵誘発を行なった場合に、卵胞が破れていない確率は20%くらいという報告が多いです。理由はわかっていませんが、クロミッドで排卵誘発をした場合、卵胞が破れない率が高くなるようです。
クロミッドを飲んで人工授精をした人を調べてみると、最初の周期で卵胞が破れないのが25%、そのうち次も続けて破れなかったのが78%、2回破れないと3回目も破れないのが90%だったという論文があります。
クロミッドを使っていてルフだった時は、次もルフになっていないか確認した方がいいと思います。
自然周期の場合は、たままた卵胞が破れなかったということが多くて、毎回破れないという人は3%くらいです。
ルフの原因
明らかな原因はわかっていません。
- 原因不明の不妊症
- 子宮内膜症
- 手術既往・感染などにより子宮・卵巣の周りに癒着がある
- 多嚢胞性卵巣症候群
- 痛み止めを使っている
などの人がルフになりやすいと言われています。
卵胞が破れるのにプロスタグランジンという物質が重要な働きをしていると考えられています。またプロスタグランジンは痛みを起こす原因物質でもあります。痛み止めはプロスタグランジンの合成を抑制して痛みをおさえるのですが、プロスタグランジンが合成されないと卵胞が破れにくくなってしまう可能性があります。
なりやすい項目のどれかにあてはまる人は、排卵直後に超音波をしてルフがないか確認した方がいいです。
ルフの治療
原因がはっきりわかっていないこともあって、ルフの治療にはこれといった決め手はありません。
- 排卵の時にHCGを使ってしっかり排卵させる
- 腹腔鏡手術で癒着を治す、内膜症を治療する
- 排卵の時に痛み止めを使わないようにする
などが考えられますが、どれも確実な治療ではありません。
どうしても繰り返し卵胞が破れないようなら、体外受精も考えなくてはなりません。
まとめ
基礎体温はちゃんと高温期になっているし、黄体モルモンもしっかり出ているので、順調に排卵していると思いっているのになかなか妊娠しない。そんな時には、黄体化未破裂卵胞症候群かもしれません。
排卵後に超音波で、卵胞が破れているか確認してもらってください。