体は若返らないけれど、体外受精で卵胞の発育が悪い人にはDHEAが効果あるかも
DHEA(デヒドロエピアンドロステロン)は男性ホルモンのひとつですが、若返りホルモンと呼ばれていることが多いです。若返りってすごく魅力的ですよね。
実際には、DHEAのサプリを飲んだからといって体が若返るというはっきりしたデータはないようです。
一方で、体外受精で排卵誘発の注射をしても卵胞が少ししか育たなくて妊娠しない人に、DHEAのサプリを使うと、妊娠率が高くなるという報告が多くあります。
でも、DHEAは男性ホルモンなので副作用が気になりますよね。
DHEAはなぜ若返りホルモンと呼ばれるのか
DHEAは男性ホルモンのひとつですが、男性ホルモンの作用は強くありません。DHEAから強い男性ホルモン作用のあるテストステロンや女性ホルモンが作られます。
DHEAは女性の場合、副腎や卵巣の莢膜細胞で作られています。20~24歳がピークで、年齢とともに少なくなっていきます。40歳から50歳にかけて急に少なくなって、75歳ではピークの10~20%になります。
DHEAの働き
DHEAは男性ホルモンの働きがあるので、筋肉や骨の強さを保ったり、肌のハリを保つ働きがあります。その他にも、
- うつ病の予防
- 認知力の維持
- 安眠作用
- 糖尿病・高脂血症の予防
- 免疫力を助ける
- 活力を保つ
- 性機能を保つ
などの働きがあると考えられています。
年齢とともに少なくなっていくことや、その働きから若返りホルモンと呼ばれているのです。
DHEAサプリを飲むと若返る?
年を取るとDHEAが低くなります。そんな時にDHEAのサプリを飲むと若返りの効果があるのでしょうか。
今までの研究では明らかな効果は証明されていないようです。
アメリカで最も有名な病院のひとつのメーヨークリニックの公式サイトには
「DHEAは若返り効果があると言われて、慢性疾患の予防や、体のパフォーマンスをよくするために使われていますが、多くの研究では効果が示されていない」
と書かれています。
アメリカ国立衛生研究所の一般向けに情報を提供している「MedlinePlus」というサイトでは、 DHEAサプリの効果を次のように判定しています。
効果がありそう
- 肌のハリを保つ
- うつ病の症状をよくする
効果がないと思われる
- 体型・骨・筋肉の強さを保つなどの老化に対する効果
- リュウマチの症状をよくする
効果はなさそう
- 認知力の維持
- ドライマウス
データが不十分で判定できない
- 慢性疲労の改善
- 筋肉疲労の改善
- 更年期症状の改善
- 性機能の改善
- ダイエット
もともとDHEAにはここであげられたような働きがあると考えられていますが、加齢とともに出てくる症状は、DHEAが少なくなっただけが理由ではないので、DHEAだけを補給しても、あまり改善しないということだと思います。
DHEAの不妊症への効果 〜卵巣が若返る?
DHEAは卵胞の中にできる莢膜細胞から作られます。卵胞のDHEAは、顆粒膜細胞を増やす・FSHの効果を高めるなどの働きによって、卵胞が育つのを助けています。
DHEAの卵胞を育てる働きを利用して、前回の体外受精の排卵誘発で卵胞が少なかった人(卵胞が3個以下など)や卵巣予備能が低くなっている人(AMHが1.1ng/ml以下)にDHEAを使って、体外受精の妊娠率が高くなるかという研究が多く行われています。
これらの研究をまとめた研究も何個かあって、その中で一番新しい2016年に発表されたものを紹介します。
17の論文の1883人のデータをまとめた研究です。
DHEAを飲んだ人は、飲んでいない人と比べて
- 妊娠率は約1.5倍
- 流産率は約半分
- 生児獲得率は約2倍
- 採卵数は約2倍(症例の平均年齢が36歳以下の論文)もしくは約1.3倍(症例の平均年齢が36歳以上の論文)
になりました。
DHEAは排卵誘発の刺激に対する反応の悪い人に効果がありそうですね。ただし、まだ症例数が十分とは言えないので、結論を出すにはさらに多くの症例を集めた研究が必要です。
卵巣が若返るわけではない...と思います
DHEAを飲むとAMHが高くなるという論文がいくつかあります。ただし、40歳以上の人はDHEAを飲んでもAMHはそれほど高くはならないようです。
AMHが高くなるという論文を紹介して、DHEAは卵巣を若返らすことができると紹介しているサイトを見かけます。
DHEAの卵胞を育てる働きで、原始卵胞が全胞状卵胞になることでAMHが高くなると考えられます。
卵胞が育ちにくかったのが、育つようになるということなので、見方によれば卵巣が若返ると言えなくもないですが、普通にイメージする卵巣が若返るというのとはちょっと違うと思います。
DHEAの副作用
DHEAの副作用として次のようなものが考えられます。
- ニキビ
- 脱毛
- ヒゲ
- 声が低くなる
- 生理不順
- 胃のムカムカ
- 高血圧
DHEAは男性ホルモンなので、その作用による副作用ということになります。
1日100mg以上飲んだり、1以上続けて飲んだりしなければそれほど大きな副作用は出ないと考えられています。
多量に長期の飲んだ場合には
- 乳癌・子宮癌・卵巣癌
- 子宮内膜症・子宮筋腫
- 善玉コレステロールを低くする
- 肝機能障害
- 精神への影響
などのリスクが考えられます。
妊娠中・授乳中は飲んではいけません。採卵後にはやめることになります。
DHEAの飲み方
ほとんどの論文では、体外受精の排卵誘発を始める前に、DHEAを1日75mgで3~4ヶ月飲むことで効果があらわれています。
初めての体外受精の時にDHEAを使うというのはあまりないと思うので、前の体外受精で卵子が少ししか取れなかった時に、次の体外受精で使ってみるという感じだと思います。
体外受精は3ヶ月くらい間をあけてするので、休んでいる間にDHEAを飲んでみることになります。
現在、日本製のサプリメントは市販されていないので、ネット通販で海外のサプリを買うことになります。
多嚢胞性卵巣症候群の人は注意
多嚢胞性卵巣症候群の人はDHEAを飲んではいけません。
多嚢胞性卵巣症候群の人はもともとDHEAを含めた男性ホルモンが高くなっていることがあるので、DHEAを飲むことでその症状がひどくなる可能性があります。
まとめ
海外では25%の病院で、体外受精の時の卵巣の反応が悪い人にDHEAを使っているという調査があります。
DHEAは、今回ご紹介してデータからするとかなり効果がありそうですが、残念ながら日本製のサプリはありません。
使い方を誤ると副作用のリスクがあります。海外のサプリを使う時には主治医と相談して下さい。