長すぎる禁欲期間は精子の質を悪くするようです
精液検査をする時には、精子を取る前に2日から4日間の禁欲期間が必要です。短すぎると精子が少なくなりますし、長すぎると運動率が悪くなったり、異常精子が増えてしまいます。
人工授精をする時には、禁欲期間が短いほど妊娠率が高くなって、3日以下だと妊娠率が14%で、10日以上になると妊娠率が3%になってしまうという論文があります。
さらに、禁欲期間が2日以下だと妊娠率が11.3%、3〜5日だと6.1%、6日以上だと7.3%という論文もあります。この論文では、禁欲期間が短い方が精子の数は少ないにもかかわらず、妊娠率は高くなっていました。
体外受精や顕微樹瀬の場合は、良い精子を選んで使うので、元の精子の状態はあまり影響がないようにも思えますが、どうでしょうか?
[toc]
体外受精の時の禁欲期間の妊娠率への影響
2017年12月に「ファーティリティ アンド ステリリティ」に発表された論文をご紹介します。
体外受精もしくは顕微授精をした人を、精子採取の禁欲期間を2~7日間の人と、8日以上の人に分けて、妊娠率などを比較しています。
禁欲期間 | 2~7日間 | 8日間以上 |
受精率 | 67% | 66% |
着床率 | 26.4% | 18.2% |
妊娠率 | 44.4% | 32.7% |
生児獲得率 | 34.1% | 24.1% |
流産率 | 7.3% | 6.2% |
禁欲期間が短い方が、着床率・妊娠率・生児獲得率が高くなっています。
禁欲期間が2~7日間の人の中でも、特に禁欲期間が2~4日間の人が生児獲得率が高くなっています(36.1%)。
禁欲期間が短い方がいい理由
禁欲期間が短くなると、元気に動いている精子の数は少なくなります。そうならば妊娠率が低くなりそうですが、なぜ禁欲期間が短い方が妊娠率が高いのでしょうか。
睾丸で作られた精子は、射精されるまで精管・精巣上体などに貯まっています。長く貯まっていると、周りにある白血球や死んでしまった精子から出る活性酸素によって、精子のDNAがダメージを受けて、精子の質が悪くなってしまうと考えられています。
実際に、禁欲期間が2日未満だとDNAにダメージを受けた精子が14.5%ですが、禁欲期間が6日以上だと17.1%に増えるという論文があります。
禁欲期間が長いと、精子のDNAがダメージを受けてしまうので、受精はするけれども着床率や生児獲得率が低くなってしまうのではと考えられています。
禁欲期間は短い方が便利
体外受精や特に人工授精は、する日が直前に決まることも多いので、いつから禁欲にすればいいかわからないこともあると思います。
禁欲期間が短くてもよいなら、あまり気を使わなくてよくなります。例えば禁欲期間が2日以下でよいなら、HCGを打つことが決まった後から禁欲すればいいということになります。
いまのところ症例数が一番多いのが今回ご紹介した論文ですが、症例数が少ない論文で、禁欲期間と妊娠率に関係はないという結論のものもあるので、まだはっきりとした結論が出ているわけではありません。
ただし、禁欲期間が短いと妊娠率が低くなるということはないようですので、HCGを打つことが決まった後から禁欲するということでよいのかもしれません。
今回ご紹介した論文は、まだ不妊治療をしている産婦人科医に広がっているわけではないと思うので、禁欲期間が短いのはよくないという先生もいると思います。
基本は主治医の先生の指示に従うのがいいと思います。