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産婦人科専門医による妊活ガイド

流産した後の次の妊娠はいつからトライしていいの【産婦人科専門医が解説】

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流産した後は、すぐ次の妊娠にトライしてもいいのでしょうか

 残念ながら流産してしまった場合、できるだけ早く次の妊娠をトライしたいですよね。

 世界保健機関(WHO)は、流産後、次の妊娠まで6ヶ月以上あいだを開けることを推奨しています。

 いくら何でもこれは長すぎますよね。実際は、3ヶ月くらい開けてから次の妊娠をと説明している病院が多いと思います。ただし、これも明らかな根拠があるわけではなく、上の先生からそう教えられたからという場合が多いと思います。

 流産後にすぐ妊娠するとよくないことがあるのでしょうか?

 多くの論文をまとめた研究をご紹介します。

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流産後6ヶ月未満の妊娠と6ヶ月以上の妊娠を比較

 2017年のヒューマン・リプロダクション・アップデートに発表された論文です。

 10の論文の約5万の症例をまとめて解析しています。

 WHOが6ヶ月以上あいだを開けることを推奨しているために、流産後6ヶ月未満の妊娠と6ヶ月以上の妊娠を比較しています。

次の妊娠も流産になる可能性

 流産後6ヶ月未満で妊娠した人の流産率が10.5%、流産後6ヶ月以上で妊娠した人の流産率が12.5%で、早く妊娠した方が流産率が低いという結果でした。

早産になる可能性

 流産後6ヶ月未満で妊娠した人の早産率が7.5%、流産後6ヶ月以上で妊娠した人の早産率が9.7%で、早く妊娠した方が早産率が低いという結果でした。 

その他

 死産・弛緩発作(妊娠高血圧症候群になったときに起きやすくなるけいれん発作)・低出生体重児などの合併症の可能性は、流産後6ヶ月未満の妊娠と6ヶ月以上の妊娠で差がありませんでした。

3ヶ月未満の妊娠も大丈夫?

 流産後6ヶ月未満の妊娠の方がなぜ流産率や早産率が低いのか、理由ははっきりわかっていません。

 いづれにしても、流産後6ヶ月未満の妊娠が問題になることはないので、WHOの推奨は変更した方がよいと考えられます。

 今回の論文は、流産後6ヶ月未満の妊娠と6ヶ月以上の妊娠を比較していますが、臨床の場で実際によく言われている、3ヶ月以上開ける必要があるというのがどうでしょうか。

 流産後3ヶ月以下の妊娠と3ヶ月過ぎの妊娠を比較した論文があります。

 流産後3ヶ月以下に妊娠した人の生児獲得率が80.4%、3ヶ月過ぎてから妊娠した人の生児獲得率が74.6%で、差はなかったということです。

 さらに細かく分けてみると、流産後1ヶ月以下に妊娠した人の生児獲得率が83.3%、1ヶ月すぎ2ヶ月以下に妊娠した人の生児獲得率が85.9%、2ヶ月すぎ3ヶ月以下に妊娠した人の生児獲得率が76.2%で、1ヶ月以下に妊娠しても生児獲得率には差がありませんでした。

 3ヶ月以下については論文が少ないので、信頼性は高くありませんが、流産後すぐ妊娠しても、あまり問題はなないようです。

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