妊活の最初の本格的治療が人工授精
人工授精 業界用語ではAIH 、正式には配偶者間人工授精です。
外来で「人工授精を考えましょう」と言うと、「それって大変な治療なんですよね」とおっしゃる方がよくいます。体外受精と勘違いしているのだと思われます。確かに「人工授精」ていうとなんかすごいことのように感じてしまいますよね。
今回は、人工授精について詳しく解説します。
人工授精をするのはどんな時か
- 精液検査が正常以下の時
- ヒューナーテストで精子が少ない時
- 精神的な問題などで性交時に射精ができない時
- タイミング法をしても(6回くらい)妊娠しない場合
人工授精のやり方
排卵誘発をするか
人工授精をする際にはクロミッドやHMG注射などによる排卵誘発を組み合わせることが多いです。
- 複数の排卵で妊娠のチャンスを増やす
- しっかり排卵させてタイミングを合わせやすくする
などの効果を期待します。
精子の状態が悪いために人工授精を行う場合は、自然排卵と排卵誘発で妊娠率には差がないとされています。
原因不明でタイミング療法をしたけれどもで妊娠せず人工授精を行う場合は、排卵誘発をした方が妊娠率が高くなるというデーターが多いです。
排卵誘発をした場合には、多胎妊娠や卵巣過剰刺激症候群のリスクがあります。発育した卵胞が4~5個(3個と言う人もいます)以上になったら、このようなリスクを避けるために人工受精をキャンセルするのが望ましいです。
排卵誘発をする場合、クロミッド内服+1日おきのHMG注射を2~3回くらいという軽めの排卵誘発をすることが多いです。
人工授精の実際
タイミング療法と同じように超音波で卵胞の大きさをチェックします。卵胞が十分大きくなったらHCGを注射して、その24~34時間後にタイミングを合わせる代わりに人工授精をします。
人工授精をするのが決まった日に精液を取るカップを渡されると思いますので、当日の朝そのカップの中に精液を全部出してもらって病院に持っていきます。病院に着いたらすぐに精液の入ったカップを提出してください。できれば精液を取ってから30~60分以内に提出するのがいいです。
持ってきてもらった精液を遠心して、元気な精子だけを集めます。
精液を分離液の上に乗せて遠心すると、元気な精子が下に沈みます。動いていない精子や元気のない精子は精液と分離液の境目にあります。上にある精液・動いていない精子をすてて、分離液を少しだけ残して元気な精子を濃縮します。
このようなカテーテルを子宮の入り口から子宮の中に入れて濃縮した精子を注入します。
子宮に注入した精子数と妊娠率
精子の数がどのくらいあれば人工授精で妊娠することが可能なのでしょうか。
これはアメリカ生殖医学会のデーターです。
注入した精子数が50~100万以下ならば妊娠率が低いので、体外受精を考える必要があります。
私の病院では40万くらいで妊娠した人が何人かいますし、100万以上あればそれなりに妊娠例もあるので100万以上あれば4~6回くらいまで人工授精を行なっています。
どのくらいの精子数まで人工授精をするかは病院によってかなり違いがあると思います。
何回まで人工授精をするか
人工授精1回での妊娠率は5~10%とされていますが、6回目以降は5%以下になるとの報告が多く、4~6回をめどに体外受精へステップアップしている病院が多いと思います。10回目で妊娠することもあるので、若い人なら10回くらいやるという病院もあります。
年齢、精子の状態、早く妊娠したいかなどの状況で考えていくことになります。
人工授精の副作用
子宮の中に管を入れる時に、バイ菌が入ってしまって感染を起こすことがあります。お腹が痛くなって熱が出ます。1000回に1回くらいなので、まれなことです。感染予防のために人工授精の後に抗生剤を飲むようにしている病院が多いです。
子宮の中にカテーテルを入れる時に出血することがあるので、家に帰ってから少し出血がつくことがあるかもしれません。少しであれば心配ないので普通にしていてください。
まとめ
人工授精の1回での妊娠率は報告によってかなりバラツキがありますが、だいたい5~10%くらいです。6回行うまでに25~40%くらいの人が妊娠します。
体外受精と比べれば全然負担が少ないし、毎月することができます。それほど大変な治療ではないので、躊躇せずにトライしてみてください。
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