子宮腺筋症の体外受精の時の妊娠率・流産率への影響は
それほど頻度は高くありませんが、妊活で一番治療に困るのが子宮腺筋症です。
なかなか妊娠できなくて体外受精に進む人も多いのですが、子宮腺筋症があると体外受精でも妊娠しにくいようです。
多くの論文をまとめて研究が出たので、解説します。
子宮腺筋症があるとなぜ妊娠しにくいのか
子宮腺筋症があると妊娠しにくくなる理由は、いろいろなことが考えられています。というか、そのいろいろなことが合わさって妊娠しにくくなっていると思います。
- 子宮が大きくなると卵管が引き伸ばされて卵管の働きが悪くなる
- 子宮腺筋症から子宮の中に分泌される物質が精子の動きを悪くする
- 子宮腺筋症から子宮の中に分泌される物質が受精卵の着床をじゃまする
- 子宮の壁の血行の変化
- 妊娠に必要な子宮の壁の運動が悪くなる
などが原因として考えられています。
子宮腺筋症の体外受精の結果への影響
多くの論文をまとめて、子宮腺筋症の人:519人と子宮腺筋症のない人:1,535人を比較した研究です。
子宮腺筋症があると
- 着床率が34%低くなる
- 妊娠率が25%低くなる
- 生児獲得率が40%低くなる
- 流産率が2.2倍になる
という結論です。妊娠率が低くて流産率が高いので、生児獲得率がかなり低くなってしまいます。
子宮腺筋症が広がっているとよくない
子宮腺筋症の部分が子宮の一部にしかない場合と、子宮全体的に広がってしまっている場合とで、体外受精の妊娠率に違いはあるのでしょうか。
左のように子宮の一部にだけ子宮腺筋症がある場合は手術で取るのも比較的簡単ですが、右のように子宮全体に腺筋症が広がってしまっていると、手術をするのも難しくなります。
腺筋症が子宮全体に広がっていると、一部にだけある場合と比べて、体外受精の妊娠率が約26%低くなりました。
子宮腺筋症核出術の効果
子宮腺筋症の治療として子宮腺筋症核出術をすることがあります。
子宮腺筋症核出術をすると、しない場合と比べて、自然の妊娠率が約6倍になったというデータがあります。50症例くらいの比較しなので、データの信頼性はそれほど高くありませんが、6倍というとインパクトありますよね。
子宮腺筋症核出術は難しい手術で、デメリットもあるので、主治医とよく相談して手術をするか考えてください。
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まとめ
不妊治療をしている人の中で、不妊の原因となるほどの子宮腺筋症がある人の頻度はそれほど高くないと思いますが、増えてきている印象はあります。
子宮腺筋症の人は、体外受精での妊娠率が低く、流産率が高くなるようです。
子宮腺筋症核出術やGnRHアゴニストによる治療を考えなければならないかもしれません。
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