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産婦人科専門医による妊活ガイド

妊活の強敵クラミジア–自分だけ治療してもダメです

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不妊症の原因になるクラミジアは知らないうちに感染している

 クラミジアっていうのが不妊の原因になるらしいというのは聞いたことがある人も多いと思います。知らないうちに感染していて不妊の原因となっているかもしれません。でも、クラミジアってなんだかよくわかりませんよね。

 今回はクラミジアについて産婦人科医が詳しく解説します。

そもそもクラミジアってなに

 クラミジアは細菌の仲間ですが、普通の細菌より小さくて、細胞の中に入り込んで増えていく微生物です。

どうやって感染するの

 クラミジアは性感染症です。感染する能力が高くて、1回の性行為で30~40%の確率でうつると言われています。

 20歳代の女性の感染率が最も高く、20~30%が陽性という報告もあります。感染率は地域や対象によって変わってきます。私の病院で主に30歳代の人に不妊検査として行った場合の陽性率は10%くらいです。

症状は

 感染しても80%近くの人は特に症状がありません。潜伏期は約2週間といわれていて、おりものや出血などの症状が出るのが20~30%です。でもこのくらいだと気にせずやり過ごすことも多いと思います。症状が全くないことの方が多いです。卵管やお腹の中まで広がって重症化すると、熱が出る・お腹が痛いなどの感染症状を起こしますが、非常に稀です。

検査法

内診台でする抗原検査

 性感染であるクラミジアはまず子宮の入り口(子宮頸管)に感染します。子宮頸管の細胞をこすり取って、クラミジアがいるか検査するのが抗原検査です。内診台で行います。

 この検査が陽性なら、子宮の入り口にクラミジアがいるということになるので治療が必要です。

 この検査が陰性なら、子宮の入り口にはクラミジアがいないということになりますが、卵管などにクラミジアがいるかもしれません。

採血でする抗体検査

 採血で行います。抗体とは細菌やウイルスが体に入ってきた時にそれをやっつけようとしてできるものです。なので抗体があるということは体がクラミジアが入っていきたことを感知したということになります。クラミジアがいなければ抗体はできません。

 クラミジアが治ってもすぐに抗体がなくなるわけではないので、抗体が陽性だとしても、感染したのはかなり前でクラミジアはもういなくなっている可能性もあります。

抗原検査

抗体検査

検査法

内診台で

採血

感染部位

子宮頸管

体のどこかに感染(卵管、腹膜)

陽性なら

感染がある

感染があった~ある

効果判定

陰性なら治った

(子宮頸管以外に感染がある可能性あり)

治ってもすぐ陰性にならない

 抗体検査はIgGとIgAという2種類の抗体を調べます。

  IgGはクラミジアに感染してから1ヶ月後くらいから陽性になって数年間はきえません。

 IgAはクラミジアに感染してから2週間くらいで陽性になって6ヶ月くらいできえます。再度感染するとまた2週間くらいで陽性になります。

 以上より、抗体検査の結果は以下のように考えれば良いということになります。

IgA

IgG

判定

感染していない

1ヶ月以内に感染した

感染したことがあるが治っている

感染している

クラミジアは不妊の原因になるのか

 クラミジアが子宮・卵管・お腹の中に広がると図のようなことが起きて不妊の原因となることがあります。

 卵管水腫というのは卵管の先(卵管采)がつまって卵管の中に水が貯まって卵管がはれてしまう状態です。

 クラミジアに感染すると(検査が陽性になると)どのくらいの割合で不妊になるのかは正確なデーターがありませんが、おそらく数%で、10%まではいかないと思います。

 妊娠中期(妊娠28週くらい)にクラミジアの抗原検査を行いますが、陽性率は5%以下です。妊婦でも陽性になる人がいることから、クラミジアに感染していたからといって必ずしも妊娠しないわけではないということが言えます。

 一方で妊娠している人の陽性率が全体の陽性率より低いということは、やはりクラミジアが陽性だと妊娠しにくくなるであろうということも言えます。

クラミジアの治療

 抗原検査が陽性もしくは抗体検査でIgAが陽性なら治療が必要です。

 卵管造影で卵管に異常がなかったとしても、クラミジアがいると卵管の働きが悪くて妊娠しにくくなる可能性があるので治療が必要です。

 治療は抗生剤の内服です。ジスロマックという抗生剤4錠を1回飲めばOKです。2週間後には90%の人でクラミジアがきえています。

パートナーの治療

 クラミジアの感染力は非常に強いので、夫婦のどちらかが感染しているとすると、もうひとりの方も感染している可能性が高いと考えるべきです。片方だけ治療して治ってもまたすぐうつってしまうので、両方が治療する必要があります。パートナーもいっしょに抗生剤を飲んでください。

治療の効果判定

 抗原検査が陽性だった場合、治療後2~3週間くらいに再検査して陰性であれば効果があったと判定できます。

 抗体検査の場合、クラミジアが消えても、抗体が消えるまでに時間がかかるので、効果判定にはあまり役に立ちません。

 ジスロマックを飲めば治ると考えて、他の不妊治療を進めていくことになると思います。

ポイント

 今クラミジアに感染していなくても、感染したことがあれは、その影響で卵管の働きがすでに悪くなっている可能性があります。

 卵管の働きは、子宮卵管造影で判断します。

 子宮卵管造影が異常なければ、とりあえず卵管機能はOKと考えて他の治療を進めます。

 卵管周囲の軽い癒着などは卵管造影でもわからないので、そこまで確認するには腹腔鏡手術でお腹の中を見てみなければなりません。一般的にはすぐにそこまではせず、他の治療などでもなかなか妊娠しない場合に腹腔鏡を考えます。

 クラミジアの治療の流れです。腹腔鏡手術で卵管の異常を治すのが難しいと考えられたり、早く妊娠したい場合などには、すぐに体外受精に進むこともあります。

 腹腔鏡手術については別記事で詳しく説明します。

まとめ

 クラミジアは知らないうちに感染していることが多く、感染率もかなり高い病気です。妊活をする際にはチェックを受けて、もし陽性なら夫婦で治療を受けてください。

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