受精卵のグレードと着床前スクリーニングを組み合わせることで妊娠する受精卵を選べるのか
受精卵(胚盤胞)のグレードで、着床・妊娠しやすい受精卵かどうか評価する方法をご紹介しました。
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受精卵のグレードって気になりますよね。
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ただし、受精卵のグレードが悪くても妊娠することもあって、見た目だけで評価しているグレードには限界があります。
着床前スクリーニングの結果を合わせるとといろいろなことが見えてきます。
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着床前スクリーニングで染色体異常のある受精卵をチェック
着床前スクリーニングは、現在日本では認められていません。
受精卵を戻しても妊娠しない・流産してしまうという原因の多くは、受精卵の染色体異常です。
着床前スクリーニングで、受精卵の染色体異常をチェックして、異常がない受精卵を移植するのです。
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受精卵のグレードと染色体異常の関係
グレートの悪い受精卵は染色体異常の割合が高くなるというデータが多いです。
一応グレードをおさらいしておきましょう。
胚盤胞の成長具合によるステージと、胚盤胞の中の細胞の状態を組み合わせてグレードが決まります。
胚盤胞の成長のステージでいうと、
- ステージ5・6 染色体異常:50%
- ステージ3・4 染色体異常:58%
- ステージ2以下 染色体異常:65%
内細胞塊の状態でいうと、
- A 染色体異常:51%
- B 染色体異常:57%
- C 染色体異常:59%
栄養外胚葉の状態でいうと、
- A 染色体異常:46%
- B 染色体異常:59%
- C 染色体異常:61%
となっています。
グレードが悪くなると染色体異常の割合が高くなっていますが、思ったほど大きな違いではないですね。
というか、なにより驚くのが、グレートの良い受精卵でも約半分は染色体異常があるということです。
受精卵のグレードは染色体異常があるかないかについて少しは参考になるかもしれませんが、それほど役には立たないというのが現状ですね。
染色体異常がない時に、受精卵のグレードは役立つのか
着床前スクリーニングをして受精卵に染色体異常がないとわかった時に、グレードは妊娠するか予測するのに役立つでしょうか。
2014年の論文では、受精卵のグレードを
- Excellent:3AA以上
- good:3~5でABまたはBA
- average:3~5でBB、ACまたはCA
- poor:それ以下
というふうに分けて検討しところ、妊娠率は
- Excellent :49.1%
- good :59.4%
- average :43.3%
- poor :53.8%
で、グレードが悪くても妊娠率は変わらないと報告しました。
2017年に別の研究者が同じような論文を発表して、妊娠率と流産率が
- Excellent :84.2%、0%
- good :61.8%、2.7%
- average :55.8%、11.3%
- poor :35.8%、18.9%
で、グレードが良い方が妊娠率が高く、流産率が低いと報告しました。
この研究者は、2014年の論文はpoorな受精卵のデータが13個しかないので、信頼性が低いと言っています。ちなみにこの研究ではpoorが106個入っています。
特に、内細胞塊の状態が重要で、Cの評価だと妊娠率が13.5%、流産率が53.8%になってしまうと報告しています。
まとめ
受精卵のグレードは妊娠率を反映していて、特に染色体異常のない受精卵の場合にグレードが良いと妊娠率が高くなるようです。
ただし、グレードが悪いからといって妊娠しないわけではないということも、理解しておいて下さい。
着床前スクリーニングをすると、妊娠率を高めて流産率を低くするメリットがありますが、日本では認められていません。
おそらく、当分は認められないと思います。