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産婦人科専門医による妊活ガイド

子宮内膜症性卵巣囊腫〜手術した方がいいの?

更新日:

妊活の大敵の子宮内膜症ー卵巣囊腫を手術すると妊娠しやすくなるのか。卵巣予備能への影響は?

 子宮内膜症はお腹の中に広がっていって、卵管の癒着を起こしたり、子宮内外の環境を悪くして妊娠しにくい原因となります。

子宮内膜症と妊活について産婦人科医が解説します

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 腹腔鏡手術でお腹の壁の子宮内膜症を焼いたり、お腹の中をよく洗うことによって、妊娠しやすくなります。

 子宮内膜症で卵巣がはれるのが子宮内膜症性卵巣囊腫です。袋の中に溶けたチョコレートのような液体が貯まってくるので、チョコレート囊腫と呼ばれます。子宮内膜症の女性の30%くらいにチョコレート囊腫があります。

 妊活をする時にはチョコレート囊腫を取った方がいいのでしょうか。

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チョコレート囊腫があると妊娠しにくくなるか

 卵巣がはれて卵管が引き延ばされると卵管の働きが悪くなると考えられます。また卵巣に子宮内膜症があると、卵巣の正常な部分に炎症や酸化ストレスが及んで卵子の質に影響します。

 内膜症性囊腫を腹腔鏡手術で取ると妊娠しやすくなるかをまとめた報告がコクラン・レビューにあります。

 不妊症の人で内膜症性囊腫があった場合に腹腔鏡で囊腫を取ると、取らないのと比較して

  •  妊娠率は約1.6倍
  •  生児獲得率は約1.7倍
  •  流産率は変わらない

と報告しています。

 子宮内膜症性囊腫あること以外に不妊の原因がないのになかなか妊娠しない時には、子宮内膜症性囊腫を取ることを考えて良いと思います。

妊活中
どのくらいの大きなならとった方が良いのですか?
産婦人科医
大きさについては基準がるわけではありません。4cmくらい以上なら取ることを考えるという意見が多いです。

卵巣囊腫核出術

 子宮内膜症性囊腫(チョコレート囊腫)というのは子宮の中にチョコレートが貯まった袋ができた状態です。手術ではこの袋だけくり抜いて正常な卵巣は残します。

 実際の手術の画像をご覧になりたい方はこちらこちらへどうぞ。

手術の悪影響

 手術することによってAMHの数値が下がる、すなわち卵巣予備能が低下するというのは以前から指摘されていました。

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 2012年に発表された多くの論文をまとめた報告では、手術前のAMHが3.9~4.7ng/mlであったのが、手術後には2.0~3.3ng/mlと明らかに低下していたとしています。特に両方の卵巣囊腫を取った時に低下が大きいようです。

 もちろん、AMHが低くなったからといって排卵が起きなくなるわけではないので、内膜症性囊腫を取ることで妊娠しやすくなる可能性があると考えられるなら手術を行います。

 一方で、特に若い女性の場合、安易に手術をすると将来の卵巣予備への影響が大きいので、安易に手術をするべきではないと言われています。

手術しないで様子を見ていると良くないこと

妊娠中のトラブル

 内膜症性囊腫があると、早産になる確率や胎児の育ちが悪くなる確率が2倍くらい高くなるという論文があります。変わらないとする論文もあるので、この点に関してははっきりしていません。

 心配されるのは、妊娠中に子宮が大きくなった影響で、内膜症性囊腫が破裂してしまう可能性です。破裂して中のチョコレートがお腹の中にこぼれてしまうと、お腹の中に炎症を起こして、すごくお腹が痛くなったり、場合によっては陣痛を引き起こして早産になってしまう危険があります。そんな場合には、緊急手術が必要になります。どのくらいの確率で起こるのかというデーターはありません。というか確率を出せないほど、滅多にあることではないようです。

 また、これもまれなことですが、分娩の時に囊腫が胎児の頭が出るじゃまになってしまうことがあります。

内膜症性囊腫が癌になる可能性

 内膜症性囊腫が悪性でないかは、経膣超音波やMRIなどでかなり正確に判定することができます。ただし、最終的には手術で取って顕微鏡で調べて見なければ、断定することはできません。

 術前の経膣超音波で悪性ではないと診断された516人の女性の子宮内膜症性囊腫は、術後の顕微鏡の検査で悪性と診断されたものはゼロだったという報告があります。高く見積もったとしても1%はないようなので、超音波で悪性でないと診断されたなら、それほど心配しなくてもいいようです。

 さらに考えなければならないのが、今は悪性でなくても、将来悪性になる可能性です。日本での有名な研究があって、6698人の内膜症性卵巣囊腫がある女性を17年間経過観察したところ、46人が卵巣癌になったというのです。内膜症性卵巣囊腫がない6698人の女性が17年間で卵巣癌になるのは5.1人と推測されるので、約9倍の発生率ということになります。

 ただしこの研究が行われていた時期は、まだ経膣超音波が十分に普及したいなかった時期が含まれているので、最初の段階で卵巣癌を見落としていたものが含まれているのではないかという批判があります。

 少なくとも、定期的に検診を受けて、万一悪性が疑われるようになったら早めに手術できるおようにしておいた方がいいと思います。

まとめ

 子宮内膜症性卵巣囊腫は妊活の前に手術をした方が良いのでしょうか。

 初めから手術をした方が良いという根拠はないようです。卵巣予備能の低下のリスクがあります。

 なかなか妊娠しない、腹痛などの症状がある場合は手術を考えます。

 不妊の状況、年齢、症状、囊腫の大きさ・位置などをもとに主治医とよく相談してください。

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