何回胚移植をしても妊娠しなかったら子宮内膜スクラッチングをした方がいいのか
子宮の中に戻した受精卵が着床しやすくするために子宮内膜に傷をつけるのが「子宮内膜スクラッチング」
そのやり方についてはこちらの記事でご紹介しました。
Fertility and Sterilityの2018年9月号にどんな人に子宮内膜スクラッチングをすると効果があるのかを調べた論文が出ました。
10の論文の1,468症例をまとめた研究です。
なかなか面白い結果が出ています。産婦人科医が解説します。
子宮内膜スクラッチングした人としない人を比べると
まず最初に子宮内膜スクラッチングをした人としなかった人全体で妊娠率を比べています。
子宮内膜スクラッチングをした人の妊娠率が36.0%、しなかった人の妊娠率が27.6%で統計学的に子宮内膜スクラッチングそした人の方が妊娠率が高いという結果でした。
生児獲得率でみても、子宮内膜スクラッチングをした人は32.3%、しなかった人は24.3%と統計学的に子宮内膜スクラッチングそした人の方が生児獲得率が高いという結果でした。
多胎妊娠率・流産率・子宮外妊娠率には差がありませんでした。
2回胚移植をしても妊娠しなかったら子宮内膜スクラッチングをした方がいい
子宮内膜スクラッチングは良い受精卵を移植しても妊娠しなかった時に行われることが多いのですが、何回うまくいかなかった時に子宮内膜スクラッチングの効果があるのか検討しています。
1回胚移植をして妊娠しなかった人が次に子宮内膜スクラッチングをした場合の妊娠率が50.0%、生児獲得率が47.4%、子宮内膜スクラッチングをしなかった場合の妊娠率が43.8%、生児獲得率が40.1%でした。
どちらも子宮内膜スクラッチングをした方がよかったですが、統計的解析で差があるというレベルではありませんでした。
2回以上胚移植をして妊娠しなかった人が次に子宮内膜スクラッチングをした場合の妊娠率が33.1%、生児獲得率が25.6%、子宮内膜スクラッチングをしなかった場合の妊娠率が19.2%、生児獲得率が15.8%でした。
2回以上胚移植をして妊娠しなかった人は、妊娠率がかなり低くなりますが、子宮内膜スクラッチングをした方が妊娠率が高くなりました(統計検定でも差を確認)。
子宮内膜スクラッチングをするタイミング
子宮内膜スクラッチングをいつどのようにするのがよいかは、まだわかっていません。
この研究では、排卵誘発を始める前の周期の排卵後、すなわち基礎体温が高温期の時に2回子宮内膜スクラッチングをすると妊娠率が高くなるという結論でした。
高温期の時に2回子宮内膜スクラッチングをした場合の妊娠率が47.0%、生児獲得率が42.6%、子宮内膜スクラッチングをしなかった場合の妊娠率が36.7%、生児獲得率が32.7%でした。
こちらのデータは、以前に何回胚移植をしているかは考えていないデータです。
あと、前の周期の基礎体温が低温期の時に1回子宮内膜スクラッチングをした場合が統計的にみて妊娠率が高くなっていましたが、1つの論文だけの結果なので信頼性は低いと思います。
1回でいいのか2回がいいのか、いつするのか、何を使ってどのようにスクラッチするかなど、子宮内膜スクラッチングのやり方については、まだはっきり確定していません。今後の研究が必要ですね。
凍結胚移植の時には子宮内膜スクラッチングの効果はない?
凍結胚移植の時の子宮内膜スクラッチングの効果を調べた論文は2つしかありませんでした。
子宮内膜スクラッチングをしても妊娠率は高くなっていませんでした。
2つの論文ともに、高温期に1回子宮内膜スクラッチングをしたものでした。
凍結胚移植の時の効果については、今後の研究の結果をみてみないとわかりません。
子宮内膜スクラッチングは効果がありそう
今回の研究でもやはり子宮内膜スクラッチングは効果がありそうですね。
良い受精卵を2回胚移植をしても妊娠しなかったら、子宮内膜スクラッチングを試すと良いと思います。