体外受精に進む前に子宮内膜症性嚢腫を取った方が妊娠率が高くなるでしょうか
子宮内膜症性嚢腫を取ると、自然妊娠する可能性が1.6倍くらい高くなります。他に原因がなくてなかなか妊娠しないなら、子宮内膜症性嚢腫を取ることを考えるとお話ししました。
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子宮内膜症性卵巣囊腫〜手術した方がいいの?
妊活の大敵の子宮内膜症ー卵巣囊腫を手術すると妊娠しやすくなるのか。卵巣予備能への影響は? 子宮内膜症はお腹の中に広がっていって、卵管の癒着を起こしたり、子宮内外の環境を悪くして妊娠しにくい原因となり ...
では人工授精などの治療をしてもなかなか妊娠しなかったので、体外受精をすることになった時、その前に手術をした方が良いのでしょうか。体外受精は費用と手間のかかる治療です。なるべく妊娠しやすい状態にしてからやりたいですよね。
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子宮内膜症性嚢腫があると体外受精をしても妊娠しにくいのか
おなじみヒューマン・リプロダクション・アップデートの報告です。
内膜症性嚢腫がある人とない人を比べて、妊娠率・生児獲得率に差がなかったと報告しています。ただし内膜症性嚢腫があると、胚移植までたどり着けないキャンセル率は約3倍になり、採卵できた卵子の数は10~20%少なくなっています。
この報告の妊娠率・生児獲得率というのは、体外受精1回あたりのものではなく、対象になった人の何割が妊娠・生児獲得したかということなので、妊娠するまでに何回体外受精をしたかということは検討に入っていません。内膜症性嚢腫があるとキャンセ率が高いということは、妊娠率は変わらないけれど、妊娠するまでに必要な体外受精の回数が多くなっているのかもしれません。
体外受精の前に子宮内膜症性嚢腫を取ると妊娠率はたかくなるか
体外受精の前に内膜症性嚢腫を取った人とそのままにした人を比べて、妊娠率・生児獲得率に差がなかったと報告しています。キャンセ率・採卵数にも差がありませんでした。
内膜症性嚢腫を取ったからといってキャンセル率が低くなるわけではないようですね。というか、内膜症性嚢腫を取ると、体外受精の排卵誘発に必要なHMG(FSH)の注射の量が増えてしまいます。内膜症性嚢腫を取ったことによる、卵巣予備能の低下がその理由なのかもしれません。
あまり手術をするメリットがなさそうですが・・・
子宮内膜症性嚢腫を残したまま体外受精をするデメリット
手術をしないで様子を見ていて良くないことはこちらの記事で解説しました。
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体外受精をするときに子宮内膜症性嚢腫があると良くないことを考えてみましょう。
採卵しにくい
特に嚢腫が大きいと、卵胞が遠くになってしまったり、卵胞が嚢腫に押されて変形したりして、採卵しにくくなります。実際に採卵していて、内膜症性嚢腫がある卵巣は卵胞数が少ないし採卵しにくいというのは強く感じます。
子宮内膜症性嚢腫への感染
採卵の時に嚢腫の中に細菌が入ってしまって感染を起こす可能性があります。内膜症性嚢腫の中身は溶けたチョコレートみたいなものでしたね。これは、卵巣にできた子宮内膜症の部分から生理の時などに出血して血が貯まっていって、それが古くなってチョコレートみたいになっていると考えられています。このチョコレートは栄養豊富なので、そこに細菌が入るとあっという間に増えて卵巣に膿が貯まってしまいます。
採卵の時には抗生物質を点滴して感染を予防しますが、それでも感染が起きることがあります。
感染したら抗生物質で治療しますが、なかなか膿の中まで抗生物質がしみていかないので、手術で膿をきれいにしなければならなくなることが多いです。
感染はどのくらいの確率で起きるのでしょうか。データーはあまりないのですが、108件の採卵で2件(1.9%)感染を起こしたというのと、214件の採卵で感染はなかったという報告があります。滅多にあることではないようですね。
採卵の時に吸い出した卵胞液に、チョコレートが混ざってしまう
内膜症性嚢腫の向こう側に卵胞があると、内膜症性嚢腫をつらぬいて卵胞を刺すことがあります。このような時に吸い出した卵胞液にチョコレートが混ざってしまいます。チョコレートの中には卵子に害となる物質が多く含まれているので、チョコレートが混ざると受精しにくくなったり、受精卵の育ちが悪くなる可能性があります。
実際に、チョコレートが混ざってしまった卵子の受精率や妊娠率がどうなるか調べたデーターは少ないです。妊娠率が少なくなったという報告もありますが、影響はないという方が多いです。
まとめ
「体外受精をする前に子宮内膜症性嚢腫を取った方がいいのか」この疑問に対する答えはまだ出ていません。
取ると妊娠率が高くなるというデーターはありません。ただし、嚢腫だけでなくお腹の中の内膜症がある場合には、手術の際に嚢腫を取るだけでなく、お腹の中の内膜症を焼いたり、お腹の中をよく洗うことによって、着床しやすくなる可能性があります。
嚢腫を取ることによって卵巣予備能が低くなる可能性があります。
頻度は低いですが、取らないと良くないこともあります。
個人個人の状態によって、主治医とよく相談して考える必要があります。