予防できる可能性はありますが、まだデータは不十分です
ネット上には葉酸サプリでダウン症が予防できると書いてあるサイトがたくさんあります。
あながち間違いではありませんが、結論が言い過ぎになっているものが多いように思います。
葉酸サプリとダウン症の関係について、多くのデータを解析して、正確な情報をお届けしたいと思います。
[toc]
葉酸サプリがダウン症を予防するというのは、どこから始まったのか
葉酸サプリでダウン症を予防できると言っているサイトが紹介しているのが、2003年に医学会の中でも最も権威のある雑誌のひとつと言われている「ランセット」という雑誌にのった論文です。
ランセットの論文のデータ
- 神経管閉鎖障害のこどもの兄弟姉妹1492人のうちダウン症であったのが11人(1.87人)
- ダウン症のこどもの兄弟姉妹の1847人のうち神経閉鎖管障害であったのか7人(1.37人)
かっこの中は母親の年齢などを考えた、一般的に予測される発症数です。
神経管閉鎖障害には水頭症のみも含まれています。
ようするに、兄弟姉妹に神経管閉鎖障害とダウン症の人がいる確率は、一般的に予想される確率よりはるかに高いということです。
この論文の結論は
「ダウン症と神経管閉鎖障害はつながりがある(同じ原因がある)と考えられるので、葉酸サプリはダウン症のリスクを減らす効果がある可能性がある」
ということです。
この論文が発表された時には「葉酸サプリでダウン症が減るかもしれない」とかなり報道されたようです。
効果がある可能性があっても、実際には効果がなかったということもいっぱいあるので、この論文が実際に葉酸サプリがダウン症を予防する効果があることを証明しているわけではありません。
また、この論文が発表された直後に、同じように行われた研究で、兄弟姉妹に神経管閉鎖障害とダウン症の人がいる確率は、一般的に予想される確率と変わりがなかった。という論文が発表されています。
さらに、ダウン症の子供が神経管閉鎖障害を合併するリスクは高くないという論文もあります。
ダウン症と神経管閉鎖障害がつがりがあるということ自体、意見は分かれています。ランセットの論文だけが一人歩きしているようです。
ダウン症と神経管閉鎖障害につながりがあるというのには根拠があります。
神経管閉鎖障害の子供を産んだ母親は、葉酸を活性化する酵素の遺伝子に変化がある人が多かったというデータがあります。酵素がうまく働かなくて葉酸が活性化されないと、いくら葉酸を取っても葉酸不足と同じ状態になってしまいます。
実は、同じ葉酸を活性化する酵素の遺伝子に変化がダウン症の子供を産んだ母親にも多いというデータがあります。これがダウン症と神経管閉鎖障害につながりがあるということの根拠になっているのです。
ダウン症というのは21番の染色体が3本あるのが原因です。普通は2本ですね。
葉酸は細胞分裂に重要な働きをしているのですが、葉酸が働かないと細胞分裂の時に染色体がうまく分かれていかなくて、染色体が多い細胞ができてしまうことがあります。21番染色体が多い卵子が受精するとダウン症になってしまいます。
葉酸が働かないとダウン症になりやすいのであれば、葉酸サプリでダウン症を予防できる可能性があるということですね。
では実際に、葉酸はダウン症のリスクを少なくするのでしょうか
食品に葉酸が添加されたことの効果
2000年前後に世界各国で食品に葉酸添加が義務付けられて、その後、神経管閉鎖障害の発生が25~50%少なくなったのでしたね。
ダウン症候群は少なくなったのでしょうか?
アメリカ・カナダでは、ダウン症の発生率は変わらなかったと報告されています。葉酸添加によりダウン症の発生が少なくなったという報告は確認できませんでした。
葉酸サプリによる効果
葉酸サプリを飲むとダウン症を予防できるのか研究したちゃんとした論文を見つけることはできませんでした。
神経管閉鎖障害の予防効果を調べた研究は数多くあるので、ついでにダウン症はどうだったか調べればいいと思うのですが、残念ながらあまり調べられていないようです。
まとめ
理屈では、葉酸サプリによってダウン症のリスクを少なくすることができそうですが、実際には証明されていません。
特定の人にだけ効果がある・葉酸の量が多いと効果がある、ということがあるのかもしれません。
新しい研究成果が出るのを期待しましょう。