葉酸食品・葉酸サプリが使われるようになってから、神経管閉鎖障害の子供の男女比が変わった
もともと神経管閉鎖障害の子供は、女の子が多いという報告がいくつかありました。
南アメリカでは、女の子は1万人に18人、男の子は1万人に12人と、女の子の方が男の子の1.5倍の頻度だったと報告されています。
チリやアルゼンチンでは2000~2003年に食品に葉酸が添加されるようになって、神経管閉鎖障害の頻度が半分になりました。
女の子の方が多かったのが、葉酸摂取により男女同じくらいになったという論文が最近出ましたのでご紹介します。
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葉酸を食品に添加する前後の、神経管閉鎖障害の男女比
チリでは
葉酸添加前 男性：115,127人中125人（0.11%）、女性：109,478人中207人（0.19%）
葉酸添加後 男性：174,955人中97人（0.06%）、女性：165,678人中92人（0.06%）
葉酸添加前後で、神経管閉鎖障害の頻度が半分近くになっています。
特に女の子の頻度が減って、添加前は女の子が男の子の1.7倍の頻度であったのが、添加後には同じ頻度になっています。
アルゼンチンでは
葉酸添加前 男性：478,971人中489人（0.1%）、女性：459,867人中855人（0.19%）
葉酸添加後 男性：190,197人中138人（0.07%）、女性：181,332中137人（0.08%）
チリと同様に、特に女の子の頻度が減って、添加前は女の子が男の子の1.9倍の頻度であったのが、添加後には同じ頻度になっています。
特に無脳症・首から胸の二分脊椎が女の子に多い
神経管閉鎖障害の中でも、特に女の子に多いのが無脳症と首から胸の二分脊椎です。
無脳症や首から胸の二分脊椎はは女の子が約2倍でしたが、葉酸添加後はほぼ同数になっています。
神経管閉鎖障害はなぜ女の子の方が多いのか？
ここまで読んで、皆さんもなぜ女の子に多いのが知りたいですよね。
論文にもいくつかの考えられる理由が書いてあるのですが、はっきりとした理由はわかっていません。
神経管閉鎖障害の男の子は妊娠早期に死亡することが多い
何らかの理由で、神経管障害の男の胎児は、妊娠早期に死亡して流産になってしまうので、結果として生まれて来るのは女の子が多いという説です。
しかし、なぜ神経管障害の男の胎児が妊娠早期に死亡することが多いのかは、わかっていません。
メチル化が足りなくなる
聞いたことがない言葉を出して申し訳ありません。ただし、今のところこれが一番大きな理由ではないかと考えられているのです。
DNAがメチル化されることによって、遺伝子の働きが調節されています。
女性はX染色体を2本持っているのですが、メチル化によってX染色体にある遺伝子の働きが調節されています。男性はX染色体が1本しかなくメチル化で調節する必要がありません。
一方で、神経管の閉鎖にもメチル化が必要と考えられています。
女性はX染色体をメチル化しなければならないので、神経管閉鎖に使うメチル化の能力が不足して、神経管閉鎖障害が起こりやすくなるというのです。
葉酸はメチル化の能力を高める働きがあるので、女性が不足しているメチル化の能力を補って、神経管閉鎖障害が少なくなると考えられています。
葉酸を補給しても起きてしまう男女同数の神経管障害は、メチル化とは関係ない、葉酸の効果がない、他の原因で起きるものだろうと説明されています。
葉酸を飲んでも100%神経管閉鎖障害を予防することはできない
女の子に神経管閉鎖障害が多い理由は、葉酸が神経管閉鎖障害を予防するメカニズムと関連があるようです。
それ以外の原因で起きる神経管閉鎖障害は、男女で同じように起こり、葉酸では予防できないということになります。