子宮卵管造影の結果は正確でないこともあります
痛い思いをして子宮卵管造影をしたところ、両方の卵管がつまっているみたいだと言われました。両方の卵管がつまっていては、自然妊娠はできません。体外受精をしなければならないのでしょうか。
もしくは、片方だけつまっていると言われることもあります。そうすると妊娠する確率は半分になってしまうのでしょうか。
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妊活で一番痛い検査が子宮卵管造影です
子宮卵管造影の実際–不妊症の検査 不妊症の検査の中で、子宮卵管造影はちょっと特別な検査です。「子宮卵管造影検査は痛い」などと聞くと不安になりますよね。今回は子宮卵管造影の実際について産婦 …
子宮卵管造影の結果をどのように考えればいいのかを解説します。
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子宮卵管造影の診断はどのくらい正確か
子宮卵管造影で卵管がつまっていると診断されても、実際はつまっていないということがあります。痛みによる卵管の収縮、造影剤の入り方、子宮内膜の状態などにより本当は通っているのに、検査の時は通らなかったということがあります。
卵管が通っているかを調べるのに最も確実な検査は腹腔鏡と考えられます。腹腔鏡でお腹の中を見ながら、子宮から色のついた水を入れて、それが卵管の先から出てくるのを確認します。
ただし、腹腔鏡で卵管が通っていないと診断されても、その後子宮卵管造影をしたら卵管が通っていたということもまれにあるので、腹腔鏡の診断が100%確実というわけでもありません。
子宮卵管造影の診断の正確性を調べた論文は多いです。子宮卵管造影の後に腹腔鏡をして結果を比較しています。
子宮卵管造影で卵管がつまっていると診断されても、そのうちの10~30%くらいは腹腔鏡で見たら通っていると診断されています。
この割合は、報告によってかなりバラツキがありますが、結構高いですよね。
子宮卵管造影で卵管がつまっていると診断された人が自然に妊娠する可能性は
子宮卵管造影をして、片方もしくは両方の卵管がつまっていると診断されたけれども、他の検査に異常がなくて、このプログラムで1年以内に自然妊娠する可能性が40%以上と判定された人が、1年以内にどのくらい自然妊娠するのかを調べた論文があります。
卵管が両方とも通っていると診断された人と比べて、片方の卵管がつまっていると診断された人は、1年以内に妊娠する確率が19%低くなったそうです。
さらに両方の卵管がつまっている人は、1年以内に妊娠する確率が72%低くなったそうです。
これは、とても興味深いデーターですね。
卵管のつまりが片方だけであれば、反対の卵巣から排卵した時には妊娠が可能です。自然の排卵はどちらかの卵巣から1個だけ排卵しますが、必ずしも交互に排卵するわけではありません。同じ側から3回続けて排卵する可能性もあります。つまっている卵管の側から排卵した時は妊娠する可能性はほとんどありません。なので妊娠するチャンスは半分になってしまいますが、1年間で妊娠する確率はそれ程低くはならないようですね。
私の病院では、片方の卵巣がつまっていると思われる人には、クロミッド内服などの軽めの排卵誘発を使って両方の卵巣から排卵するようにして毎月チャンスを作ることも勧めています。
子宮卵管造影の診断は100%正確ではないので、両方の卵管がつまっていると診断されても、自然に妊娠する人がいるということもこの論文からわかります。子宮卵管造影で両方の卵管がつまっていると診断された85人のうち7人が1年以内に自然妊娠しています。
子宮卵管造影で卵管がつまっていると診断されたらどうするか
片方の卵管がつまっている
つまっていない側の卵巣から排卵した時には自然妊娠が可能なので、子宮卵管造影で異常がない時と同じように他の検査の結果や年齢・不妊期間などの状況で、その後の治療を考えれば良いと思います。
毎月妊娠のチャンスができるように、クロミッドなどの軽めの排卵誘発を使うのもいいと思います。
両方の卵管がつまっている
子宮卵管造影で両方の卵管がつまっていると診断されても、絶対に自然妊娠しないというわけではないので、年齢が若くて不妊期間が短い人は半年くらいはタイミング療法や人工授精を試してもよいかもしれません。
腹腔鏡をして卵管の状態をより正確に確認して、可能であればつまっている卵管の通りを戻す処置をするというのも有力な選択肢になります。腹腔鏡で見たら卵管がつまっていなくて、体外受精をする必要はないと診断されることもあります。
腹腔鏡をしても、つまりの程度が強くて結局なにもすることができず、体外受精でないと妊娠できないという結果になったり、つまりを治してもまたすぐにつまってしまうこともあります。
以上のことをふまえた上で、すぐに体外受精に進むというのも考えられます。
まとめ
子宮卵管造影の診断は絶対ではありません。両方ともつまっていると診断されても、自然妊娠することもあります。
より確実に診断してから治療を進めていくなら腹腔鏡がオススメです。