顕微授精で生まれた54人の男性の精液検査をしました
顕微授精をしなければならないくらい精子が少ない人は、精子を作る遺伝子に異常がある可能性があります。精子を作る遺伝子はすでにわかっているものもいくつかあって、異常があるか調べることができるものもあります。今はまだわかっていない遺伝子に異常がある可能性もあります。
これらの遺伝子の異常は、顕微授精でできた男の子に受けつがれる可能性があります。そうなると、生まれた男の子も精子が少なくなると考えられます。
こちらの記事も参考にしてください。
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1992年にベルギーで世界で初めて顕微授精による子供が生まれました。日本でも1994年に最初の出産が報告されました。
そうです、最初に顕微授精で生まれた子供でもまだ25歳です。ようやく顕微授精で生まれた男の子たちが成人するようになってきたので、精液検査がどうなっているかわかってきました。
実際に、顕微授精で生まれた子供の精液を調べたデータがあるのでご紹介します。
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顕微授精で生まれた男の子の精子は約半分
2016年に発表されたデータです。顕微授精で生まれた男の子の精液を調べた初めての論文です。
顕微授精で生まれて、18〜22歳になった54人を調べました。
顕微授精で生まれた男の子は、自然妊娠で生まれた男の子と比べて
- 精子濃度は約半分
- 総精子数は約半分
- 総運動精子数は約半分
- 精子濃度が正常以下(1ml中に1500万以下)の人が3倍
- 総精子数が正常以下(3900万以下)の人が4倍
だったと報告しています。精液検査についてはこちらを参考にしてください。
精子濃度が半分といっても、顕微授精で生まれた子供の平均が2930万/mlなので、平均値で言えば自然妊娠も可能なくらいの数字ということになります。ただし、精子濃度が正常以下の子供が43%、体外受精が必要なくらいの少なさの子供が15%います。
ちょっと意外ですが、父親の精子数と男の子の精子数はあまり関連性がなかったようです。
精子濃度が1ml中に500万未満の人には、Y染色体の微小欠失の検査を行っていますが、異常が見つかった人はいませんでした。
Y染色体の微小欠失がある男性から生まれた男の子は、Y染色体の微小欠失が遺伝していたという報告はいくつかあります。というか理論的に遺伝するはずなので当たり前といえば当たり前です。
この男の子の精液検査がどうかというデータはまだ出てきていないのですが、もう数年でデータが出てくると思われるので注目されます。
まとめ
顕微授精で生まれた男の子は、自然妊娠で生まれた男の子と比べて、精子濃度が半分で、15%は体外受精が必要なくらい精子濃度が低かったということです。
顕微授精を受けるときにはこのことを理解して、男の子が生まれたら早めに精液検査をすることも考えておく必要があると思います。