顕微授精とはどういうものか
ひと通り検査が終わったところで「顕微授精じゃないと妊娠難しいですね」と言われたらびっくりしますよね。でも妊娠する可能性は十分あります。
[toc]
顕微授精が必要になるのは
重症の男性不妊
精液の精子濃度がどのくらいならば顕微授精が必要になるかという明確な基準はありません。病院によってかなり違うと思いますが、運動精子が50万/ml以下なら最初から顕微授精を考えると思います。
もちろん、無精子症で精巣内精子採取術などを行って精子を取ってきた場合も顕微授精になります。
通常の体外受精で受精しない〜受精障害
精液検査が正常なのに通常の体外受精で受精しないという原因不明受精障害が10~20%あるといわれています。初めての体外受精でまったく受精しなかった場合、2回目も全く受精しない割合は40~50%とされています。
3個以上採卵できたのに一つも受精しなかった場合、次回は顕微授精が選択肢になります。
顕微授精の流れ
顕微授精を受けるみなさんにとっては、通常の体外受精と違うところはありません。同じように採卵して、同じように胚移植をします。
採卵したその日のうちに顕微授精をします。採卵された卵子は12~16時間くらいで劣化してしまいますので、その前に顕微授精を行います。
顕微授精の装置です。顕微授精は胚培養士が行うことが多いです。かなりの熟練が必要です。
一番大変なのが、細い針の中に精子を吸い込むことです。元気に動いている精子のしっぽを切ったりこすったりして動きを止めます。マイクロのレベルの操作になります。
卵子に針を刺して精子を注入する際も、細胞膜を破るのが難しくて熟練が必要です。
スプリット(split)法
採卵でとれた卵子を、通常の体外受精で受精させる卵子と顕微授精で受精させる卵子に分けて両方を行う方法です。
原因不明で人工授精でも妊娠せずに体外受精に進むケースも多いです。受精障害は通常の検査では診断できないので、原因不明の場合は実は受精障害が原因だったという可能性があります。それを考えて、最初から一部の卵子は顕微授精で確実に受精させるというやり方です。
体外受精の1割くらいがスプリット法で行われています。
顕微授精の成績
顕微授精の受精率は80~90%という報告が多いです。これもまた病院によって違っていて70%くらいから100%近いと報告している病院もあります。
妊娠率に関しては、通常の体外受精と変わらないというのと、顕微授精の方が少し低いというのに分かれます。体外受精で受精しない症例が顕微授精になっているので、顕微授精には妊娠しにくい症例が集まっているので妊娠率が低くなってしまうという可能性があります。
実際に男性不妊のために最初から顕微授精をした場合、通常の体外受精と妊娠率は変わりません。
顕微授精でも受精しない
顕微授精をしても3%くらいまったく受精しないケースがあります。そうなると、その先の治療は難しくなります。研究段階ですが、顕微授精をした後に電気刺激や薬を使って卵子の中にカルシウムが流れ込むようにすると、卵子が活性化して受精することがあるようです。
年齢などにより卵子の質が低下したため受精しなくなっている場合には顕微授精をしても受精するのは難しいです。
まとめ
今では体外受精の60%が顕微授精です。受けるみなさんは体外受精も顕微授精もやることは変わりませんが、この記事で顕微授精はどういうものかわかってもらえたらと思います。