多嚢胞性卵巣症候群の症状を改善するサプリとして一番多く論文が出ているのがイノシトールです
このサイトでも、多嚢胞性卵巣症候群に効果があると言われているサプリをいくつか紹介しています。ただし、その効果は確実に証明されているレベルのものではありません。
そんな中で、イノシトールは多くの論文で多嚢胞性卵巣症候群の症状を改善する効果が報告されていて、他のサプリとはレベルが違う感じです。
多嚢胞性卵巣症候群の人は妊活中に葉酸サプリと併用してイノシトールを飲むのを考えてもいいと思います。
イノシトールにはいろいろな種類があるので、間違った使い方だと効果がないかもしれません。
イノシトールの効果について詳しく解説しますので、参考にしてください。
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ミオ・イノシトールとカイロ・イノシトール
多嚢胞性卵巣症候群に効果があるのはミオイノシトールとカイロイノシトールです。
面倒くさい名前ですが、重要なので覚えておいてください。
体内にあるイノシトールのほとんどはミオイノシトールなので、ミオイノシトールのことをただイノシトールと言っていることもあります。
カイロイノシトールはミオイノシトールや食べ物の中にあるピニトールから作られています。
ミオイノシトールとカイロイノシトールは血糖をコントロールする働きがあって、そこから多嚢胞性卵巣症候群の症状をよくすると考えられています。
では実際にどのような効果があるのか見ていきましょう。
血糖のコントロールを改善する・男性ホルモンを下げる
多嚢胞性卵巣症候群の特徴として、耐糖能異常(インスリン抵抗性)・男性ホルモンが高くなるといったことがあります。
このメカニズムの中の、インスリンが効きにくいというところを、ミオイノシトールとカイロイノシトールがそれぞれの別の方向から改善します。
ミオイノシトールだけ飲む、カイロイノシトールだけ飲む、両方飲む、どの場合でも、多嚢胞性症候群のインスリン抵抗性の改善・男性ホルモンの低下の効果があったという報告が多いです。
どちらかというと、ミオイノシトールはインスリン抵抗性の改善に、カイロイノシトールは男性ホルモン低下の働きが強いとしている報告があります。
この記事を書いている最中にも新しい論文が出ました。ミオイノシトールを飲んだ人と、飲まない人それぞれ約250人のデータをまとめた論文です。
ミオイノシトールを飲むと、血液のインスリンが低くなる・インスリン抵抗性が改善する・男性ホルモンが低くなると結論しています。
順調に排卵する
ミオイノシトールやカイロイノシトールを飲むと、今まで排卵がなかったり、排卵が不順だった人の50~70%が順調に排卵するようになって、半年以内に40%くらいの人が妊娠したという報告があります。
同じような結論の報告がいくつかあるのですが、症例数は少なめ(100例以下)なのもが多いので、確かな結論を出すには多くの症例を集めた研究が必要です。
体外受精の時の効果
体外受精をする時のイノシトールサプリの効果を調べた研究もたくさんあります。
ミオイノシトールを飲んでいると、体外受精の時の、排卵誘発の注射の量が少なくてすんだというのは、多くの論文で結論されています。
採卵した卵子や、受精卵の質が良くなったという論文も多いです。
採卵数と妊娠率に関しては良くなったという論文もありますが、変わらないという論文も多いです。
一番多くの症例を集めた2016年の論文では、ミオイノシトールを飲むことで、排卵誘発の注射の量が少なくなる・受精卵の質が良くなるという効果が認められました。
この論文によると、ミオイノシトールとメトホルミンを一緒に飲むことで、ミオイノシトールだけより、さらに効果が高まったということです。
ほとんどの論文で、ミオイノシトールの量は1日4gが使われています。
カイロイノシトールの体外受精への効果はいまひとつはっきりしていません。
カイロイノシトールを1日1g飲むと採卵した卵子の質が良くなったという論文がありますが、カイロイノシトールの量が0.6g→1.2g→2.4gと増えるほど、卵子の質・受精卵の質が悪くなるという論文もあります。
カイロイノシトールのパラドックス
この記事を書いている最中に、顕微授精の時のミオイノシトールの効果をまとめた研究も発表されました。1000人以上のデータをまとめた研究です。ミオイノシトールを飲むと、良い卵子の数は約2倍、良い受精卵の数は1.6倍、妊娠率は1.3倍になると報告しています。症例数が十分でないのでミオイノシトールを飲むのがよいと断定するところまではいっていません。
イノシトールの効果をまとめてみました
イノシトールの効果をまとめた論文があるので、その結論をご紹介します。
ミオイノシトールもしくはカイロイノシトールを使った論文をまとめた論文です。
男性ホルモン
遊離テストステロン → 変化なし
総テストステロン → 低くなる
アンドロステンジオン → 低くなる
男性ホルモンには色々な種類があります。多嚢胞性卵巣症候群の診断基準に「血中男性ホルモン高値」という項目がありますが、この3種類の検査のうちどれかが高ければ診断基準にあてはまります。
イノシトールには男性ホルモンを下げる効果ありそうです。
排卵・妊娠
排卵 → 排卵するようになる(コントロールの約3倍)
妊娠 → 妊娠率が高くなる(コントロールの約3倍)
生児獲得率 → 高くなる(コントロールの約3倍)
排卵しやすくなって、それにより妊娠率も高くなるようです。
肥満
BMI → 変わらない
体重が減るまでの効果はないようです。
糖尿病予備軍
空腹時血糖 → 低くなる
空腹時インスリン → 低くなる
インシュリン抵抗性 → 低くなる
糖尿病予備軍の体質の改善効果があるようです。
繰り返しになりますが、このいくつかの論文をまとめた研究でも、症例数はさほど多くありません。結論を出すにはより多くの症例の研究が必要です。
イノシトールの飲み方は
ミオイノシトールを朝晩2gずつ1日4g飲むのが効果があるようです。
カイロイノシトールは1日0.6~1gが良さそうです。
両方飲んだようが良さそうですが、どのくらいの割合がいいのかはわかっていません。
海外では、卵巣での割合と同じ、ミオイノシトールとカイロイノシトールが40:1で入っているサプリが妊活用として売られています。
ただし、飲んだ割合がそのまま吸収されて同じ割合で卵巣に働くというわけではないと考えられるので、必ずしもこの割合がいいというわけではないと思います。
イノシトールのサプリ
残念ながらミオイノシトールのサプリは国内製品はありません。アマゾンなどで海外製品を買うことになります。
国内製品だと、葉酸サプリのベジママに、ピニトールが260mg入っています。ピニトールは体内で分解されてカイロイノシトールになります。
イノシトールのサプリがありました ミオール(MYOWL)
「ミオール」はイノシトールと葉酸が入っているサプリです。
ミオイノシトールとカイロイノシトールが、理想の40:1の割合で入っています。
1日分のミオイノシトールの量は1,100mgなので論文に使われている量よりは少ないです。
モノグルタミン酸型葉酸もしっかり400μg入っています。
多嚢胞性卵巣症候群の人には、オススメの葉酸サプリです。
まとめ
イノシトールの効果をまとめてみました。
ミオイノシトール | カイロイノシトール | 両方 | |
インスリン抵抗性の改善 | ◎ | ○ | ○~△ |
男性ホルモンを低くする | ○ | ◎ | ○~△ |
排卵を順調にする | ○ | ○ | ○~△ |
排卵誘発の注射の量 | ◎ | ◎ | ○~△ |
卵子の質を良くする | ○ | ? | ○~△ |
妊娠率を高める | △ | ? | ? |
今後の症例数を増やした研究の結果によっては、評価が変わってくるかもしれません。
△や?はデータが少なくて評価が難しいということです。
その後も次々と論文が発表されています。体外受精の妊娠率も高くなるようです。
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【多嚢胞性卵巣症候群】イノシトールの効果の論文が続々と登場〜葉酸サプリといっしょに
多嚢胞性卵巣症候群の人がイノシトールを飲むと妊娠の可能性は高くなるのか 2017年の11月に、イノシトールが多嚢胞性卵巣症候群の体質の改善に効果があるという論文があることをご紹介しました。 その後 ...
イノシトールの入った葉酸サプリが国内のメーカーから市販されました。
詳しくは別記事で解説します。