子宮内膜が薄いからといって治療をキャンセルする必要はないようです
子宮内膜は受精卵が着床して育つ、妊娠にとってとても重要な場所です。
排卵日頃には子宮内膜が10mmくらいの厚さに育って、受精卵が着床しやすい環境になります。
受精卵が着床する時の子宮内膜の厚さが7mm以下だと妊娠率が低くなると考えられます。
子宮内膜が薄すぎると、「妊娠する可能性が低いので今回の人工授精はキャンセルにしましょう」と言われてしまうことがあるかもしれません。
人工授精で妊娠したかどうかと子宮内膜の厚さの関係を調べた論文をまとめた研究をご紹介します。
人工授精で妊娠した人と妊娠しなかった人で、子宮内膜の厚さに差があるか
約1500回の人工授精のデータをまとめています。
妊娠した人の子宮内膜の厚さの平均が7.1~12.1、妊娠しなかった人の子宮内膜の厚さの平均が7.0~11.0でした。
妊娠した人と妊娠しなかった人で子宮内膜の厚さに差はなかったと結論しています。
排卵誘発法と子宮内膜の厚さ
人工授精をするときは、複数の排卵で妊娠のチャンスを増やす・しっかり排卵させてタイミングを合わせやすくする、などを目的に排卵誘発剤を使うことが多いです。
排卵誘発剤としてクロミッドの内服やHMGの注射が使われます。
クロミッドを何回も使っていると、子宮内膜が厚くならなくなってしまうのでしたね。
この論文では、人工授精の時に使う排卵誘発法によって子宮内膜の厚さに違いがあるかも調べています。
クロミッド内服とHMG注射の比較
クロミッド内服で排卵誘発した方が、0.3mm子宮内膜が薄くなっていました。
やはりクロミッドを使うと子宮内膜が薄くなるようです。
でも、それ程の差でもないですね。
クロミッドを長く使っていると、もっと差が大きくなると思います。
クロミッド内服とフェマーラ内服の比較
クロミッドに取って代わるかもしれない内服の排卵誘発剤として、フェマーラという薬があります。
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クロミッド内服の方がフェマーラ内服より、0.8mmくらい子宮内膜が薄くなっています。
フェマーラも子宮内膜に影響しますが、クロミッドよりすぐに体内からなくなるので、影響は少なくなります。
子宮内膜がどのくらい薄いと良くないのか
この論文では、子宮内膜の厚さと妊娠率の関係は解析していません。
体外受精の時の子宮内膜の厚さと妊娠率の関係を調べた論文は多くありますが、人工授精での論文は多くありません。
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子宮内膜の厚さと体外受精の妊娠率との関係
子宮内膜が薄いと妊娠しにくいのでしょうか 体外受精の排卵誘発中に超音波をした時に、「卵胞が何個か大きくなったのでHCGを注射して採卵しましょう。ただし、子宮内膜が薄いので、すぐに胚移植はしないで、全 ...
体外受精の時と同じように、人工授精の時も子宮内膜が7mm以下だと妊娠率が低くなってきて、3mm以下だとほとんど妊娠しなくなるようです。
7mm以下でも妊娠する可能性はあるので、キャンセルしなくてもよいと思います。
3mm以下だときびしいですが、3mm以下というのはほとんどないと思います。