不妊治療から出産への現場から産婦人科医がわかりやすく解説します

産婦人科専門医による妊活ガイド

体外受精の排卵誘発は状況によっていろいろな方法を使います

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体外受精の排卵誘発についてわかりやすく解説します

 体外受精は排卵誘発から始まります。毎日注射をするのがふつうの方法ですが、状況によっては注射を使わないこともあります。あなたが受けている排卵誘発法はなぜその方法なのか、これを読んで理解してください。

調節卵巣刺激法

 毎日注射をして排卵誘発をする方法を調節卵巣刺激法と呼んでいます。調節卵巣刺激法にもいろいろ種類があります。

GnRHアゴニスト・ロング法

 ロング法が標準的な排卵誘発法です。初めての体外受精はこの方法ですることが多いと思います。この記事をごらんください。

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ショート法

 ロング法ではGnRHアゴニストを高温期の5~7日目から始めますが、ショート法では生理が来てから2~3日目にGnRHアゴニストを開始します。GnRHアゴニストを使っている長さで、ロングとかショートと言っているのです。

どんな時にショート法を使うのか

 ショート法は主にロング法で卵巣の反応が悪くて卵胞が数個しかできなかった場合に、より卵胞数・採卵数を増やす目的で使われます。

 GnRHアゴニストを使うと最初は下垂体が刺激されてFSHたくさんでますが、使い続けるとFSHが出なくなるんでしたね。この最初に自分の下垂体から出るFSHで卵巣への刺激が強まることを期待します。排卵誘発剤を注射する回数が少なくてすむことが多いというメリットもあります。

 デメリットは、最初にFSHが出すぎると、卵子の質の低下を招いてしまって、妊娠率が低下する可能性があるということです。

アンタゴニスト法

GnRHアンタゴニストとは

 アゴニストというのはGnRHと同じ作用を持つ物質という意味ですが、アンタゴニストはGnRHの作用を抑える物質という意味です。GnRHアンタゴニストを使うとGnRHの働きが抑えられるので、速やかに下垂体からのFSH・LH産生が出なくなります。
 GnRHアゴニストはFSH・LHの産生を抑えるのに時間がかかるので、長く使い続ける必要がありますが、GnRHアンタゴニストなら直前に使うことでLHサージが起きないようにすることができます。
GnRHアゴニストのことはこちらをご覧ください。

 生理の3日目頃から排卵誘発剤を開始して、超音波で卵胞が14~15mmになったらGnRHアンタゴニストを注射してLHサージが起きないようにします。

 GnRHアンタゴニストを注射するまでは、自分の下垂体からもFSHが出ているので、排卵誘発剤を注射する回数が少なくてすむことが多いです。また、ショート法のように最初にFSHが出すぎるということもないので卵子の質が低下することもありません。

 

ロング法

ショート法

アンタゴニスト法

対象

標準的な方法

卵巣の反応が悪い

病院の判断(反応悪い人にも効果)

薬の使用期間

長い

短い

採卵数

多い

ロングより少ない

ロングより少ない

卵巣過剰刺激症候群

多い

ロングより少ない?

ロングより少ない

排卵誘発剤の必要量

多い

ロングより少ない

もっとも少ない

妊娠率

高い

やや低い

やや低い?

 それぞれの特徴を表にしました。

 ショート法は卵巣の反応が悪くて卵子があまり取れない時に仕方なく使うという感じですね。もともと卵巣の反応がいい人に使うと卵巣過剰刺激症候群になりやすいです。

 妊娠率に関してはアンタゴニスト法とロング法であまり変わらないという報告もあります。

 こうしてみるとアンタゴニスト法がいいように見えますよね。実際、海外ではアンタゴニスト法が標準的な方法になっています。

 ではなぜ日本ではまだロング法が標準なのでしょうか。

  • 日本人は保守的なのでなかなか新しい方法に切り替えない
  • アンタゴニスト法は妊娠率が低い印象がある
  • LHサージを抑えきれなくて自然排卵してしまうことがある
  • アンタゴニストを注射するタイミングを判断するのが面倒

などが理由として考えられると思います。

アンタゴニスト法を標準的に使うかは、今のところその病院の先生の好み?ということになります。

HCG注射と採卵のタイミング

 3個以上の卵胞が18mmを超えてきたらHCGを注射して34~36時間後に採卵をします。

 18mmを超えた卵胞が3個より少なかったとしても、これ以上注射しても卵胞数が増えない状況ならそこでHCGを注射します。

 体外受精の時には、タイミング療法や人工授精の時(5000単位)より多い量(10,000単位)を注射します。GnRHアゴニスト(アンタゴニスト)によって、下垂体からのLHが押さえ込まれているので注射で入れる量を増やす必要があります。

低卵巣刺激法

 連日の排卵誘発剤の注射ではなく、クロミッドのみ・クロミッド+注射1日おきなど弱い排卵誘発法で体外受精を行う方法です。

  • 卵巣予備能低下(高年齢)などにより連日注射しても1~2個しか卵胞が大きくならない
  • 卵巣過剰刺激症候群にならないようにする

などの場合が対象になります。

 低刺激法は連日注射と比べて手間や費用の負担が少なくなります。毎月行うことも可能です。

 デメリットとしては、卵胞が育たなかった、採卵する前の排卵してしまった、採卵できなかった、受精しなかったなどで、胚移植まで行けない可能性が高くなります。

実際のやり方

クロミッドのみ 

 クロミッドを生理の3日目くらいから5日間内服。

クロミッド+注射

 クロミッドを生理の3日目くらいから5日間内服、注射を4~5日目から1日おきに。

 注射の開始時期はさまざまで、連日注射することもあります。

自然排卵

 低刺激というか刺激なしになりますが、自然の排卵で採卵することもあります。胚移植まで行かないことも多いです。

まとめ

 体外受精の排卵誘発法はさまざまな方法が使われれいます。この記事で解説した方法以外にも、それぞれの病院で工夫・修正した方法を使っていると思います。

 

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