子宮内膜の厚さと子宮外妊娠や妊娠率の関係について新しい論文を調べてみました
子宮内膜の厚さと体外受精の妊娠率の関係についてこちらの記事で解説しました。
比較的新しくて、多くの症例を解析した論文がいくつかあるので、具体的なデータをご紹介します。
(こんな感じの子宮内膜だったら、「これは妊娠しそうだな」と思ってしまいます。)
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体外受精・顕微授精の時の子宮内膜の厚さと子宮外妊娠率
子宮内膜が薄くて着床しにくいと、受精卵がさまよってしまって子宮外妊娠の確率が高くなる可能性があると考えられています。
論文①:2016年の中国の論文です。10,787人の体外受精・顕微授精の解析です。
子宮内膜の厚さ(mm) | 子宮外妊娠率(%) |
<8mm | 10.0 |
8mm~11mm | 4.3 |
11mm~15mm | 2.1 |
15mm< | 2.2 |
論文②:2017年の中国の論文です。9,952人の体外受精・顕微授精の解析です。
子宮内膜の厚さ(mm) | 子宮外妊娠率(%) |
≦8mm | 5.58 |
9mm~14mm | 3.48 |
15mm< | 2.19 |
論文③:2015年のオーストラリアの論文です。6,465人の体外受精・顕微授精の解析です。
子宮内膜の厚さ(mm) | 子宮外妊娠率(%) |
<9mm | 1.76 |
9mm~12mm | 0.76 |
12mm< | 0.44 |
自然妊娠で子宮外妊娠になるのは1~2%と言われています。
体外受精では自然妊娠より子宮外妊娠ななる確率が高くなると考えられていますが、上の3つの論文からもわかるようにその数字はまちまちです。オーストラリアの論文は子宮外妊娠の率が全体的にかなり低いですが、その理由は論文の中にも書いていないので、はっきりわかりません。
いずれにしても、子宮内膜が8mm以下だと子宮外妊娠の確率が高くなるという論文が多いようです。
体外受精・顕微授精の時の子宮内膜の厚さと妊娠率
子宮内膜の厚さが何mm以下だと妊娠しくくなるかは、はっきりわかっていません。
ただし、子宮内膜が薄いと妊娠率が低くなるという論文が多いです。
論文①では
子宮内膜の厚さ(mm) | 妊娠率(%) |
<8mm | 23.0 |
8mm~11mm | 37.2 |
11mm~15mm | 46.2 |
15mm< | 53.3 |
論文②では
子宮内膜の厚さ(mm) | 子宮外妊娠率(%) |
≦8mm | 38.5 |
9mm~14mm | 55.0 |
15mm< | 64.3 |
論文②は妊娠率が高いですね。妊娠率は治療を受けた人の平均年齢などで、大きく違ってくるものですが、それにしても高いです。
いずれにしても、子宮内膜の厚さが8mm以下だと妊娠率は低いようです。ただし、8mm以下でも妊娠しないわけではありません。
ほとんどの論文は、7mmか8mmを境目にしていますが、たとえば6mmと7mmで妊娠率を比較した論文とかはほとんどないので、本当に妊娠率が低くなるのは何mm以下からなのかは、はっきりわかりません。
子宮内膜の厚さについての論文はなぜか中国からものもが多いです。他の論文は多くても3,000例くらいの数なので、論文①と②は症例数が圧倒的にに多いです。
子宮内膜が薄い人の頻度
論文①では子宮内膜の厚さが7mm以下の人が3%、論文②では子宮内膜の厚さが8mm以下の人が4.87%でした。
体外受精をする時には、子宮内膜の状態が気になります。主治医から子宮内膜の状態について話を聞くことも多いと思います。
気にしているせいか、子宮内膜が薄い人がかなりいる印象でしたが、思ったほど多くはないようです。
まとめ
まだ確実に証明されているわけではないですが、子宮内膜が薄いと妊娠率が低く、子宮外妊娠率が高くなるようです。
不妊治療をしているほとんどの医者も、そう考えていると思います。
今回調べた論文のデータは、日常診療で感じていたよりも、子宮内膜が薄い人が少なくて、子宮内膜が薄くても妊娠する人がいるのだなと思いました。