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産婦人科専門医による妊活ガイド

男性不妊の原因と治療–薬を飲むとよくなる?【産婦人科医が解説】

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不妊症の原因の半数近くは男性にあります

 精液検査をお願いすると、「だんなが、大丈夫だからって言って嫌がって協力してくれないんです」というケース、多いです。なにを根拠に大丈夫と言っているんでしょうかね(笑)。

  WHO(世界保健機関)の調査では、不妊症の半数で男性に原因があるとされています。私の病院では男性に原因が見つかるのが40%くらいです。

 精子が少なければ、いくら頑張ってタイミングを合わせてもなかなか妊娠できません。精液検査は不妊検査でも最も重要な検査なので、必ず最初の方に受けてください。

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男性のホルモンのメカニズム

 男性も女性と同じように「視床下部ー下垂体ー(精巣)」というホルモンの流れで精子を作っています。

視床下部

 女性と同じように視床下部から出るGnRHが下垂体でLH、FSHを作るのを促します。

下垂体

 下垂体から出るのはLHとFSHですね。男性では

LH:精巣を刺激して、主に男性ホルモンを作るのを調節しています。

FSH:精巣を刺激して、精子を作るのを調節しています。

 精子のおおもとの細胞(精祖細胞)が精子になって射精されるまでに約3ヶ月かかると言われています。つまり、ご主人が昨日深酒したからといって今日の精子が良くないというわけではないということです。

WHO(世界保健機関)の調査によると不妊症の原因は

 と報告されています。

 検査をすると不妊のカップルの約半数に男性側の原因がみつかるということですね。

 海外のデーターなので日本では少し違うかもしれません。実際に私の病院では男性に原因があるのはこれよりやや少なく、原因不明が多い印象です。

 いづれにしても多くの場合男性に原因が見つかるというのは間違いなく、精液検査は最も重要な検査です。

検査

精液検査

 左の円盤の真ん中に精液をたらして、右の蓋をのせて、顕微鏡で精子の数をかぞえます。

 精液検査の正常範囲をお示ししておきます。

  • 精液量:1.5ml以上
  • 精子数:1ml中に1500万以上
  • 総精子数:3900万以上(精液量×精子数)
  • 精子運動率:40%以上
  • 総運動精子数:1560万以上(総精子数×運動率)
  • 正常形態精子率:4%以上 

精子数が少ない場合     乏精子症

運動率が低い場合      精子無力症

精子が0の場合        無精子症

少なくて運動率も悪い場合  乏無力精子症

 と診断されます。

ここだけの話

どうしても精液検査をしてくれない時は

 ヒューナーテストで膣の中に元気な精子がたくさんいれば、おそらく精子は大丈夫です。少なくともヒューナーテストは受けてください。ヒューナーテストが異常なら、絶対に精液検査をしてください。

 ヒューナーテストについてはこちらへ

 

視診、触診

 精子の大きさ、精巣静脈瘤がないかなどを診察します。

ホルモン検査

 女性と同じようにLH、TSH、プロラクチン、テストステロン(男性ホルモン)などを採血で検査します。

 ただし、無精子症以外では異常になることはほとんどないので、無精子症か極端に精子が少ない時だけホルモン検査をするということが多いと思います。

 女性が閉経後になると脳が女性ホルモンがなくなったのを感じて、女性ホルモンを作らせようとしてFSHが高くなるのと同じように、男性でも精巣で精子が作られていないとFSHが高くなります。

原因

●精子を作るのがうまくいっていない(82%)

  原因不明(42%)

  精巣静脈瘤(30%)

  その他(染色体異常、薬剤性など)(10%)

●性交渉ができない(14%)

  勃起障害(6%)

  射精障害(8%)

●精子の通り道がつまっている(4%)

 原因がわからないことが一番多いです。

 原因としてわかるもので一番多いのは精索静脈瘤です。手術を行う場合があります。

 最近は精子の通り道がつまっているということは少なくなって、性交渉ができないというケースが増えています。

 過度の飲酒や喫煙は精液所見を悪化させます。

治療

 原因がわからない場合に、精液所見をよくする薬はあるのでしょうか。

 結論から言うとありません。

 昔からビタミン剤、漢方、血流を良くする薬などが使われていて、効果があるとの報告もあります。でもお気付きのようにこれらの薬はもともと精液所見を改善するために作られた薬ではなく、よって効能書きに精液所見を改善するとは書いてありません。

 私もこれらの薬を使っていたことがありますが、効果があったという実感はありません。

 生活習慣の改善(飲酒・たばこをひかえる。十分睡眠をとるなど)の方が有効だと思います。ただし、効果が出るには3ヶ月くらいかかると考えられます。早めに生活習慣の改善を実行しましょう。

人工授精

 精液検査で正常範囲でない項目があった場合は人工授精が妊娠への近道です。

体外受精

 人工授精で子宮に注入する精子が50~100万以下になる場合、妊娠率が低くなるので(人工授精1回あたりの妊娠率が2~4%くらい)、体外受精(顕微授精)へ進むことを考える必要があります。

 これらの治療法については別に詳しく説明します。

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 精子の数と、それに対応した治療法の関係は大まかな目安であって、精子が少なくても絶対に自然に妊娠しないというわけではありません。あくまでも確率の問題です。年齢などいろいろな状況をふまえて主治医と相談しながら治療法を決めてください。早めの妊娠をご希望なら積極的に治療をステップアップしていくことをお勧めします。

薬での治療について思うこと

 精子の数を増やすとされる薬についてですが、ネットを調べると「精子を増やすことが実証されているサプリ」などと書いてあるものを見かけると思います。実際、ビタミン剤、漢方、血流を良くする薬などが精子を増やす効果があったとする論文もあります。

 ただし、次のことを考えておく必要があります。

  • その薬を使えば必ず良くなるわけではない
  • たとえば、精子数が100万から200万になったとすると、確かに倍になったからすごいと思うかもしれませんが、そうなったとしても実際に妊娠する確率はそれ程高くなるわけではありません。

 以上を理解した上で補助的な意味で使うのならいいと思います。費用や時間を考えると、薬で精子をよくして自然妊娠を期待するというのはお勧めしません。

まとめ

 昔より精液検査に協力してくれる男性は増えたと思います。検査を受けてくれる男性が増えたので男性に原因が見つかる割合が増えたということもあると思います。

 不妊かなと思ったら早めに精液検査をして、もし異常があったら人工授精、体外受精など必要な治療を受けてください。

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