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産婦人科専門医による妊活ガイド

なかなか妊娠しないけど、まだ治療しなくてもいいのか?そんな時に役立つ妊娠確率予測法

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1年間自然妊娠をトライしたけど、この後1年間で自然妊娠する確率は?

 1年間で自然妊娠できるかを予測するプログラムをこちらでご紹介しました。

妊活の参考に!1年以内に自然妊娠できるかを予測するプログラム

不妊治療が必要か診断するプログラム  オランダの研究者が1年以内に自然妊娠できる可能性を予測するプログラムをネットで公開しています。ちょっとおもしろいので紹介します。  ただし、このプログラムに関して …

 不妊の検査で異常がなかったので、自然妊娠を期待したけどなかなか妊娠しない。治療を始めた方がいいのか?悩みますよね。

 「検査に異常がなくても、2年間妊娠しなかったら体外受精を勧めるべきだ」という意見があります。実際は、それぞれの人の状況によると思います。

 今回は、不妊検査で異常がなくて自然妊娠をトライしたけど妊娠しない時、このまま続けて1年間で自然妊娠する確率を計算する方法をご紹介します。

対象になる人

 不妊症の検査で異常がなかった人が対象になります。

  • 生理が順調(周期が23~35日)
  • 少なくとも片方の卵管が正常
  • 総運動精子数が100万以上

などが条件になります。

では、やってみましょう

 上の表から5つの項目に関して、それぞれのポイントを決めます。

 具体的にやってみましょう。

  • 年齢26歳 →  16点
  • 不妊期間1年 →  0点
  • 妊娠歴なし →  26点
  • 精子運動率25% → 35点
  • 紹介元産婦人科以外 →  0点

以上で、合計77点になります。

 ポイントが決まったら下のグラフから自然妊娠の可能性を調べます。

 具体的に77点だとどうなるかというと。

 77点の人は、検査終了後1年以内に自然妊娠する可能性が約35%になります。

 半年自然妊娠しない時点で、その後1年以内に自然妊娠する可能性は約26%です。

 1年自然妊娠しない時点で、その後1年以内に自然妊娠する可能性は約20%です。

 1年半自然妊娠しない時点で、その後1年以内に自然妊娠する可能性は約17%です。

 

 実際にこのポイントをつけた人が、1年間でどのくらい妊娠するかを調べたところ、

 上のグラフのように、ポイントから予測した1年以内に自然妊娠する可能性と、実際に1年以内に自然妊娠した人の割合は、かなり一致していました。

原因不明だから妊娠しやすいというわけではありません

 原因がないなら妊娠できるのではと思うかもしれませんが、必ずしもそういうわけではありません。

 本当に原因がなくて、たまたま運が悪くて妊娠しなかった場合は、早めに妊娠できる可能性が高いと思われます。

 ただし、原因不明といっても本当に原因がないわけではなく、今できる検査ではわからない原因がある可能性があります。

  • 卵管は通っているが働きが悪くて受精卵を運ぶことができない
  • 何らかの理由で受精がうまくいかない
  • はっきりとした原因はないが着床がうまくいかない

などが理由となっている可能性があります。

 このような理由があった場合、自然妊娠しにくくなりますが、人工授精でも妊娠しにくいと考えられるので、体外受精が必要になります。

 実際に、原因不明の人に、自然妊娠をトライした場合と人工授精をした場合を比べて、人工授精の方が妊娠率が高いというデータは出ていません

 このことより、イギリスの国立医療技術評価機構のガイドラインでは、原因不明不妊で2年間妊娠しない場合は、体外受精を勧めるとしています。

 では、体外受精をすれば妊娠の可能性が高くなるのかというと、これについてもはっきり結論が出ているわけではありません。

 2015年の「コクラン レビュー」では、原因不明不妊の人の妊娠率は体外受精で32%、自然では12.7%、生児獲得率は体外受精で45.8%、自然では3.7%と報告しています。

 体外受精の方がいいようですが、症例数が少ないので、結論のクォリティはとても低いとなっています。

この結果を見てどうすればいいのか…難しいですね

 たとえば、「あなたが、今後1年間で自然に妊娠する可能性は20%です」と言われたらどうでしょう?

 それぞれの人の感じ方だと思いますが、妊活をしている人にとっては、20%は低いと思うのではないでしょうか。

 では、原因不明だけどなかなか妊娠しない時はどうすれはいいのでしょうか。

 イギリスの国立医療技術評価機構は、原因不明不妊で2年間妊娠しない場合は、人工授精ではなく体外受精を勧めるとしています。人工授精をすると妊娠の可能性が高くなるというデータがないので、人工授精は進められないというのです。

 これには賛否両論あります。実際、多くの不妊治療をしている病院では、まず人工授精をしていると思います。

 あとは年齢でしょうか。35歳以上であれば、早めに体外受精に進むのを考えていいと思います。

 体外受精でも、妊娠の可能性が高くなるという結論は出ていませんが、卵管の働きや受精に問題があった場合は、体外受精での妊娠が期待できると思います。

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