子宮内膜を圧迫していない2cmくらいの子宮筋腫でも妊娠しにくい原因になるかもしれません
こちらの記事で子宮筋腫と妊娠のことについて解説しました。
- 子宮の中に飛び出すような筋腫(粘膜下筋腫)
- 子宮の壁の中にあっても(筋層内筋腫)子宮内膜を捻じ曲げているような筋腫
は妊娠しにくい原因となっている可能性が高いので手術を勧める。
- 子宮内膜に直接影響がなくても5cm以上の筋腫
は妊娠しにくい原因になっている可能性があるので手術を考える。
というふうに解説しています。
子宮内膜に影響しないような場所にある(筋層内筋腫)小さな子宮筋腫が妊娠しにくい原因になるのかは、よくわかっていません。
子宮内膜に影響していない小さな子宮筋腫があると体外受精の時の妊娠率が低くなるのか調べた研究が2018年9月に発表されました。
体外受精の妊娠率が低くなるようです。
どんな子宮筋腫について調べたのか
子宮筋腫の体外受精の妊娠率への影響を調べた28の論文の9,189回の体外受精の結果をまとめた研究です。
- 粘膜下筋腫:子宮の中に向かって出ているもの
- 筋層内筋腫:子宮の壁の中にあるもの
- 漿膜下筋腫:子宮の外に向かって出ているもの
子宮筋腫は絵のようにできる場所によって3つの種類があります。
この研究では、子宮の壁の中にあって、子宮内膜を捻じ曲げたりしていない子宮筋腫を調べています。
子宮内膜を捻じ曲げたりしていない子宮筋腫でも5cm以上のものは妊娠しにくい原因になるかもしれないと解説しましたが、この研究では2~5cmくらいの子宮筋腫を調べています。
子宮筋腫の数は1~4個くらいです。
子宮内膜を捻じ曲げたりしていない小さな子宮筋腫でも体外受精の妊娠率が低くなる
子宮筋腫のある人の妊娠率が30.8%、筋腫のない人の妊娠率が38.4%でした。
子宮筋腫のある人の生児獲得率は22.2%、筋腫のない人の生児獲得率は28.8%でした。
どちらも統計学的にみてもしっかり差があるという結論でした。
生児獲得率の方の差が大きいのは、妊娠した後に流産して赤ちゃんを産むまでいかなかった人が多いからと考えられます。
実際に、子宮筋腫のある人の流産率は22.9%、筋腫のない人の流産率は17.3%でした。
子宮外妊娠になる率には差がありませんでした。
子宮内膜に直接影響していない子宮筋腫でも、子宮内膜の血行に影響したり、子宮の壁や子宮内膜の動きなどに影響して、妊娠しにくい・流産の原因になると考えられています。
体外受精の前に子宮筋腫の手術をした方がいいのか?
- 粘膜下筋腫
- 子宮内膜を捻じ曲げる筋層内筋腫
- 5cm以上の筋層内筋腫
は体外受精をする前に手術を考えた方がいいと思います。
ただし、子宮筋腫の手術(筋腫核出術)をすると、
- 子宮の傷がしっかり治るのを待つために、術後3ヶ月以上妊娠しないようにしなければならない。
- 妊娠したら、お産の時に帝王切開をしなければならなくなることが多い。
といったデメリットも考えなければなりません。
今回の研究で体外受精の妊娠率が低くなる可能性が指摘された、2~5cmくらいの子宮内膜を捻じ曲げていない子宮筋腫があった場合はどうしたらいいでしょうか。
確かに今回の研究では妊娠率が低くなっていますが、半分になっているというわけではありません。
手術のデメリットもあるので、よい受精卵を戻しても2~3回妊娠しなかったら手術を考えるくらいかなと個人的には思います。
子宮筋腫の位置・数・大きさ、年齢、これまでの治療歴などから、個別に主治医と相談して考えなければならないと思います。
その時に、この記事が少しでも役に立てればうれしいです。