妊活をするには肥満の改善が必要?
おそらくみなさんも肥満があると妊娠しにくいだろうと思っているでしょう。
いろいろな雑誌やネットにもそう書いてあると思います。
論文もたくさんあるので、本当にそうなのか調べてみます。意外な結論もあります。
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肥満と排卵障害
肥満の女性の排卵障害の割合は非肥満女性の約3倍になると言われています。BMIが25を越えると直線的に排卵障害の割合が増えていきます。
また同じ肥満度でも内臓脂肪型肥満(上半身型)のほうが皮下脂肪型肥満(下半身型)よりも排卵障害の頻度が高いと言われています。ウエスト・ヒップ比が高い(ようするにウエストが太い)人ほど排卵障害になりやすくなります。
肥満だとなぜ排卵障害になるのでしょうか?
肥満があると血液の中のインスリンが高くなります。インスリンは卵巣の男性ホルモンの産生を促進します。卵巣から出た男性ホルモンは、脂肪組織で女性ホルモンに変えられ、常に女性ホルモンが高めの状態になってしまいます。そうなると視床下部からのホルモンの命令系統がくるってしまって、排卵障害になります。
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ダイエットをすれば排卵障害は治るのでしょうか?
ダイエットすることで男性ホルモンが低くなるなどホルモン環境が正常化して、排卵が順調に起きるようになることが期待できます。
排卵がなかった67人の肥満女性が6ヶ月間で平均10kg体重を落としたところ90%の人が排卵するようになり、78%の人が妊娠したという報告があります。
肥満と不妊治療の効果
クロミッドの排卵誘発
肥満の人は排卵障害のことが多いので、クロミッドによる排卵誘発が必要になります。
肥満の人はクロミッドが効きにくいのですが、運動やダイエットで体重を6%くらい落とすと、クロミッドによって排卵する割合が50%くらい増えるという報告があります。インシュリンが高い(糖尿病予備軍)の人が多いので、メトホルミンを併用するとより排卵しやすくなると考えられます。
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体外受精
肥満の人は体外受精の時の排卵誘発の注射の反応が悪くて注射の使用量が多くなります。BMIが40以上の人は正常の人と比べて、卵胞が育たなくてキャンセルになる率が2倍近くになるという報告があります。
採卵された卵子にも違いがあります。肥満の人は正常の人と比べて採卵された卵子が成熟していないものが多い、大きさが小さいと報告されています。
体外受精をする前に運動やダイエットで平均5.4kg減量すると、その後の体外受精での生児獲得率が2倍になったという報告があります。
ダイエットをしても生児獲得率は変わらない???
ここまで体重を落とすと妊娠しやすくというデーターをたくさん紹介してきましたが、2016年に「ニューイングランドジャーナル オブ メディスン」という医学界で最も権威がある雑誌に、体重を落としても生児獲得率は変わらないという論文が発表されました。
6ヶ月間ダイエットや運動で減量しその後不妊治療した人と、すぐに不妊治療を開始した人で、2年後までの生児獲得率に差がなかった(減量43.9%、すぐ治療53.9%)と報告しています。
妊娠方法は自然妊娠から体外受精までさまざまです。
かなり衝撃的ですね。当然、この論文に対して批判が起こりました。
減量した人の平均の減量が4.4kgだったので、減量が不十分だったのではないかとういうのです。
また、この研究にはいろいろな不妊の原因の人が参加しているのですが、詳しく解析してみると、排卵が起きなくて妊娠しなかった人は、減量すると自然妊娠の確率が高くなっていました。
今まで数多くの論文が減量の効果を報告していますが、この論文ほど多くの症例で検討したものはありませんでした。
この論文をどう評価していくのか、不妊治療をしている医師もわからない、困っているというところだと思います。
まとめ
最後にどんでん返しになってしまいましたが、少なくとも減量により排卵しやすくなって、自然妊娠の可能性が高まるのは確かだと思います。
また妊娠したとしても、肥満があると妊娠中の合併症の増加や胎児への悪影響が考えられます。
肥満のある人( BMIが25以上)は、妊娠する前に現実的な目標として体重を5~10%落とすことが勧められています。できれば、10%を目標にしてください。ただし、極端なダイエットはかえって排卵障害起こす可能性があるので注意してください。