クロミッドを使った量が多くなると、子宮体癌のリスクが高まるかもしれません
妊娠したことがない人・多嚢胞性卵巣症候群の人は子宮体癌のリスクが高くなると考えられています。ということは多くの不妊症の人は子宮体癌のリスクを考えておかなければならないということになります。
不妊症で排卵障害がある場合は、排卵誘発剤を使います。排卵誘発剤は直接的・間接的に子宮内膜に影響します。また、排卵誘発剤で複数の卵胞が育つと、エストロゲンが高くなります。エストロゲンが高い状態が続くのは子宮体癌を引き起こす原因となるので、この点からも、排卵誘発剤の使用が子宮体癌のリスクとなる可能性があります。
コクラン・レビューに排卵誘発剤と子宮体癌のリスクの関係をまとめた論文が出たので見てみましょう。
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クロミッドと子宮体癌
クロミッド療法を受けた人の子宮体癌になるリスクが10万人あたり529人で、一般女性と比べて(10万人あたり284人)1.87倍でした。
排卵誘発の治療を受けていない不妊症の人と比べた場合は、リスクは1.32倍になります。
一般女性と比べて不妊症の人は子宮体癌のリスクが高いと思われるので、排卵誘発の治療を受けていない不妊症の人と比べた場合はリスクの違いが低くなります。
このリスクはクロミッドの使用量や使用回数と関係があって、クロミッドを2000mg以上(40錠以上)使った場合のリスクは5.48倍に、クロミッドの治療を7回以上した場合のリスクは4.17倍になります(一般女性との比較)。
注射の排卵誘発剤と子宮体癌
注射の排卵誘発を受けた人の子宮体癌になるリスクが10万人あたり245人で、一般女性と比べて(10万人あたり76人)2.99倍でした。
排卵誘発の治療を受けていない不妊症の人と比べた場合は、リスクは1.18倍で、統計的にリスクが高くなるという結果にはなりませんでした。
本当にクロミッド療法は子宮体癌のリスクを高めるのでしょうか??
今回ご紹介した論文の結論は、「特に使用量が多くなったり、治療回数が多くなるとクロミッド療法は子宮体癌を高めるように見える。しかし、これはクロミッド療法そのものによるものではなく、多嚢胞性卵巣症候群などのクロミッド療法を必要とする人がもつリスクによるところが大きいと思われる」というものです。
正確な比較の研究をするためには、多嚢胞性卵巣症候群や排卵障害でクロミッド療法をするような人を、クロミッド療法をする・しないに分けて子宮体癌の発生率を調べる必要があります。
でも、妊娠するためにクロミッド療法が必要な人にやらないわけにいきませんよね。なので、排卵誘発剤が子宮体癌のリスクを高めるかということを正確に比較するのは難しいです。
ただ、いずれにせよ排卵誘発剤を使う必要がある人は、一般女性と比べて子宮体癌になるリスクが高いというのは確かなので、注意する必要があります。
子宮頸癌検診は20歳から公費で2年に1回行われていますが、子宮体癌検診は自治体によって対応が違います。症状があって医師が必要と判断した場合に子宮頸癌検診に追加して体癌検診が行われることが多いようです。
その症状として、不正出血・月経異常などがあります。どのくらいの間隔で行うかは決まっていなくて医師の裁量にまかされています。
まとめ
クロミッドの使用量が多くなると子宮体癌になるリスクが高くなるかもしれません。
排卵誘発剤を使わなければならない人は、子宮体癌のリスクが高い可能性があるので、主治医と相談して子宮体癌検診を受けてください。