多嚢胞性卵巣症候群の人は子宮体癌に注意しましょう!
成人女性の5~10%が多嚢胞性卵巣症候群だと言われています。頻度的にはかなり多いですね。
50年以上前から、多嚢胞性卵巣症候群と子宮体癌の関連性が指摘されていました。多嚢胞性卵巣症候群のホルモンの環境の変化が影響していると考えらえれています。
ホルモンに影響を受ける女性の癌として、他に乳癌・卵巣癌があります。
今回は多嚢胞性卵巣症候群と女性の癌の関連について解説します。
[toc]
多嚢胞性卵巣症候群と子宮体癌
女性が生涯で子宮体癌になる確率は、約2%とされています。多嚢胞性卵巣症候群の人は子宮体癌になるリスクが3倍くらいになるという報告が多いです。
特に排卵障害があって排卵がほとんど起きていない人はリスクが高くなります。女性ホルモンのうちエストロゲンは子宮体癌を増やす働きがあり、プロゲステロンは子宮体癌をおさえる働きがあります。プロゲステロンは排卵した後の黄体から出るので、排卵しないとプロゲステロンが出ません。排卵しないと子宮内膜にエストロゲンだけが働きかけ続けるので、子宮体癌のリスクが高くなると考えらえます。
その他にも男性ホルモン、インスリン、LHが高いことなどが子宮体癌のリスクに関係している可能性があります。
もし子宮体癌になったら
子宮体癌は普通、閉経後になることが多いです。治療としては、まず手術で子宮と卵巣を取ります。
多嚢胞性卵巣症候群の人が子宮体癌になる場合は、若い時になることも多く、子宮・卵巣を取ることがためらわれます。
もっとも初期の状態であれば、ホルモン療法で治療できる可能性があります。半年間くらい黄体ホルモンを大量に飲むと、70~80%で癌がなくなります。
癌がなくなったところで妊娠するための治療を行なって、半分くらいの人が妊娠できます。
しかし、ホルモン療法で癌がなくなっても、半数の人で再発します。再発した場合は、手術を行うことが勧められます。
ホルモン療法を行なっても効果がなくて癌が広がってしまうリスク、黄体ホルモンによる血栓症のリスクなどを理解した上で行います。あくまでも原則は手術です。
子宮体癌の予防
排卵が起きなくてプロゲステロンが出ないことが子宮体癌のリスクを高めると考えられるので、妊娠希望がある人は排卵誘発剤でしっかり排卵を起こすようにします。すぐ妊娠の予定のない人は、黄体ホルモンを10日間くらい内服して生理を定期的に起こすようにします。
超音波で子宮内膜に異常が疑われたり、生理以外の出血がある時は、子宮体癌検診をします。
多嚢胞性卵巣症候群と乳癌
乳癌も子宮体癌と同じようにエストロゲンの影響で増えると考えられています。
多嚢胞性卵巣症候群だと乳癌になるリスクが高くなるのかは、さまざまな論文があってはっきりとしていません。ヒューマン・リプロダクション・アップデートの論文では、乳癌のリスクは変わらなかったと報告されています。
多嚢胞性卵巣症候群と卵巣癌
子宮体癌と卵巣癌は関連があるとされ、初期の子宮体癌の人の5%に卵巣癌が合併しています。特に45歳以下の人の場合、卵巣癌の合併頻度は7~30%に上昇します。
ヒューマン・リプロダクション・アップデートの論文では、多嚢胞性卵巣症候群の人が卵巣癌になるリスクは高くならないと報告しています。ただし、54歳以下の人に限ると、リスクが高くなる可能性があるとしています。
まとめ
多嚢胞性卵巣症候群の人は子宮体癌に気をつける必要があるようです。排卵しない状態をずっと放っておくのはよくありません。必要ならホルモンで生理を起こすようにしましょう。