多嚢胞性卵巣症候群の人がイノシトールを飲むと妊娠の可能性は高くなるのか
2017年の11月に、イノシトールが多嚢胞性卵巣症候群の体質の改善に効果があるという論文があることをご紹介しました。
その後も続々と論文が発表されています。
効果は確認されているのでしょうか。
ミオイノシトールは体外受精の時の排卵誘発の注射の量や期間を少なくする
8つの論文の812例の結果をまとめた研究です。
多嚢胞性卵巣症候群の人が体外受精をする時に、ミオイノシトールを飲んでいると、排卵誘発の注射をする日数が明らかに短くなりました。
多嚢胞性卵巣症候群かどうかにかかわらず、ミオイノシトールを飲んでいると、排卵誘発の注射の総量が少なくなりました。
ミオイノシトールを飲むと排卵誘発の注射に対する反応がよくなるということです。
ミオイノシトールは受精卵の質をよくする
ミオイノシトール1日4gと葉酸1日0.4g飲んだ14例と偽薬を飲んだ15例の多嚢胞性卵巣症候群症例の体外受精の結果を比較した論文です。
ミオイノシトール+葉酸を飲んだ人は、受精率が高く(58.9% vs 42.7%)、採卵した卵子や受精卵の質がよくなりました。
またこの論文では、排卵がうまくいっていない3600人の多嚢胞性卵巣症候群の人にイノシトール+葉酸を平均10週間使ったところ、70%の人が排卵するようになり、15.1%の人が妊娠したと報告しています。
クロミッドで治療したのと同様の効果があったとしています。
ミオイノシトールは多嚢胞性卵巣症候群の人の耐糖能異常をよくする
9つの論文の結果をまとめた研究です。
ミオイノシトールを飲むと、空腹時のインスリンの濃度が低くなるなどの、耐糖能異常の改善が認められました。
また、男性ホルモン(テストステロン)も低くなる傾向にありました。
ミオイノシトール(カイロイノシトール)は顕微受精の妊娠率を高くする?
8つの論文の結果をまとめた研究です。
ミオシトール(+カイロイノシトール)を飲むと、良い受精卵が約1.6倍、妊娠率が約1.3倍になったと報告しています。
ただし、この差は統計的に差があると言えるレベルには達していませんでした。
イノシトールは多嚢胞性卵巣症候群の排卵異常を改善する
10個の論文をまとめた研究です。
ミオイノシトールもしくはカイロイノシトールを飲んだ排卵のない多嚢胞性卵巣症候群362例の検討です。
イノシトールを飲むと偽薬と比べて排卵率が2.3倍になりました。
妊娠率は3.3倍になっていますが、症例数がまだ少ないため、統計的に差があるレベルにはなっていません。
ミオイノシトールは体外受精の妊娠率を高くする
9個の論文の935例の多嚢胞性卵巣症候群の人をまとめた研究です。
ミオイノシトール | あり | なし |
妊娠率 | 33.3% | 27.6% |
流産率 | 5.9% | 17.6% |
未成熟の卵子率 | 10.2% | 22.8% |
グレード1の受精卵率 | 45.2% | 41.9% |
排卵誘発剤の量 | なしより約330単位少ない | ありより約330単位多い |
この研究では妊娠率も統計的に見ても高くなったと結論しています。
ミオイノシトールは体外受精の妊娠率を高くする可能性あり!
カイロイノシトールのみを飲んでいる人も入っている2つの研究では、イノシトールを飲んでいる方が体外受精の妊娠率が高くなる傾向にありましたが、統計的に差があるレベルに達していませんでした。
ミオイノシトールのみを飲んだ人を集めた研究では統計的に見ても妊娠率が高くなったと報告されています。
イノシトールを飲むと、多嚢胞性卵巣症候群の人の耐糖能異常の改善や、男性ホルモンの低下が認められるということは多くの論文で報告されています。これらの働きが卵子や受精卵の質をよくして妊娠率の向上に関わっていると考えられます。
今までの論文を見ると、多嚢胞性卵巣症候群の人がミオイノシトールとカイロイノシトールを40:1で飲むことで、体外受精の妊娠率を高くすることができそうです。
データの信頼性は高くなってきていると思います。また新しい論文が出たらご紹介します。
国内メーカーからもミオイノシトールとカイロイノシトールが40:1で入っている製品が販売されています。
-
-
【ミオール】多嚢胞性卵巣症候群の人が妊娠しやすくなると多くの論文で報告されているイノシトールが入った葉酸サプリです【産婦人科医が解説】
イノシトールが入った葉酸サプリが国内メーカーから販売されました イノシトールは、多嚢胞性卵巣症候群の人の症状の「排卵しにくい」「男性ホルモンが高くなる」「糖尿病予備軍の体質」などを改善すると多くの論 …