多嚢胞性卵巣症候群と妊娠中の合併症の関係は
多嚢胞性卵巣症候群は多くの人が妊娠することができます。そうすると、妊娠した後の合併症や生まれた子供に影響がないかというのが気になってくると思います。
まだ、それ程多くの報告はないのですが、それらをまとめたレビューがあったので見てみましょう。
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多嚢胞性卵巣症候群は流産しやすい?
多くの報告では、多嚢胞性卵巣症候群は流産率が高くなることはないと結論されています。
オーストラリアの報告では、多嚢胞性卵巣症候群の人の流産率が20%、そうでない人の流産率が15%で、多嚢胞性卵巣症候群の人の方が流産率が高かったとされています。ただし、よく分析すると、体重の影響が大きいようです。多嚢胞性卵巣症候群の人は肥満の人が多いのでしたね。
妊娠高血圧症候群になる頻度は高くなります
多くの報告で多嚢胞性卵巣症候群の人は、妊娠高血圧症候群になる可能性が3~4倍高くなるとされています。また、子癎前症といって高血圧だけでなくタンパク尿なども出て、痙攣発作が起きる危険も高くなってくる状態になる可能性も3~4倍高くなるとされています。
妊娠高血圧症候群は肥満の人がなりやすい病気です。なので、これもまた多嚢胞性卵巣症候群の人は肥満が多いというのが関連していることが考えられます。ただし、スエーデンの研究では、体重をマッチさせても、多嚢胞性卵巣症候群のひとは1.5倍くらい子癎前症になりやすいとしています。多嚢胞性卵巣症候群のなかでも男性ホルモンが高い人が妊娠高血圧症候群になりやすいという報告もあります。
妊娠糖尿病になる頻度も高くなります
妊娠糖尿病とは、妊娠中にはじめて発見された血糖の異常です。妊娠の早い時期に血糖をはかり、これが高いときにはブドウ糖負荷試験をして診断します。
妊婦が高血糖だと、胎児も高血糖になり、流産、巨大児、胎児の形態異常・心臓の肥大・低血糖などのさまざまな合併症が起こり得ます。
多嚢胞性卵巣症候群の人は妊娠糖尿病になる可能性が3倍くらいになるとされています。当然肥満の人は糖尿病になりやすいのですが、体重をマッチさせても多嚢胞性卵巣症候群の人は2倍くらい妊娠糖尿病になる可能性が高くなります。
多嚢胞性卵巣症候群の人は早産になりやすい
多嚢胞性卵巣症候群の人は2倍くらい早産になりやすいとされています。特に男性ホルモンが高い人は3倍くらい早産になりやすいようです。
多嚢胞性卵巣症候群と胎児発育
肥満のない多嚢胞性卵巣症候群の人は赤ちゃんが小さめになる可能性が2倍になるという報告があります。逆に肥満のある多嚢胞性卵巣症候群の人は赤ちゃんが大きくなりやすいという報告があります。このように多嚢胞性卵巣症候群と胎児発育の関係は複雑なのですが、正常範囲の体重で生まれる割合は、多嚢胞性卵巣症候群では68%、そうでない人は87%で、多嚢胞性卵巣症候群の人は正常範囲の体重で生まれるのが少なくなります。大きく生まれるか小さく生まれるかどちらかになりやすいようです。
多嚢胞性卵巣症候群だとなぜ妊娠合併症が多くなるのか
多嚢胞性卵巣症候群の人は肥満や糖尿病予備軍である人が多いのでしたね。
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肥満や糖尿病がある人は、妊娠高血圧症候群や胎児発育異常など妊娠合併症のリスクが高くなります。なので肥満や糖尿病予備軍の人が多いことが、多嚢胞性卵巣症候群だと妊娠合併症が多くなる理由になっています。
日本人の場合、肥満の率はそれ程高くはありません。肥満のない多嚢胞性卵巣症候群でも妊娠合併症は多くなります。
多嚢胞性卵巣症候群だと妊娠合併症が多くなる理由のひとつとして考えられているのが、男性ホルモンが高くなることです。男性ホルモンは胎盤の発育を悪くしたり、血管に影響して妊娠高血圧症候群になりやすい環境をつくると考えられます。
他にも、生理が不順であることや、遺伝子的な原因がある可能性などが研究されていますが、まだわからないところも大きいです。
まとめ
多嚢胞性卵巣症候群の人は妊娠高血圧症候群や早産などの妊娠合併症が多くなります。その理由はまだはっきりわかっていません。肥満、男性ホルモンなどが理由として考えられています。日本人は多嚢胞性卵巣症候群でも肥満や男性ホルモンが高くなる人の割合は低いです。日本人は多嚢胞性卵巣症候群でも妊娠合併症の頻度はそれ程高くならないのかもしれません。