多嚢胞性卵巣症候群にクロムを使ってみた論文を検証
多嚢胞性卵巣症候群のひとは生活習慣病、特に糖尿病予備軍のことが多いということはこちらの記事で解説しましたね。
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欧米では「多嚢胞性卵巣症候群=肥満=糖尿病」というのが一体となっているケースが多いです。日本では肥満の割合は低いようです。ただし、多嚢胞性卵巣症候群のひとは肥満でなくても糖尿病予備軍=耐糖能異常である可能性があると言われています。
耐糖能異常とは
まずはダイエットと運動
BMI(体重(kg)÷身長(m)÷身長(m))が25以上なら、まずはダイエットと運動で減量するのが望ましいです。減量により自然に排卵するようになる、血中の男性ホルモンが低くなる、排卵誘発剤が効きやすくなるなどの効果が期待できます。
元の体重の5%の減量で効果が期待できると言われています。
原則として減量中は妊娠しないようにして、減量してから妊娠しするのが望ましいです。減量していることにより妊娠や胎児へ悪影響が出る可能性を考えてのことです。
サプリメントは効果あるの?
耐糖能異常を改善すると、自然排卵が起きるようになったり、男性ホルモンが低くなることが期待できます。世の中には糖尿病を改善するというサプリがたくさんありますよね。
でも、ネットで出てくるような糖尿病改善サプリで、多嚢胞性卵巣症候群に効果ががある(排卵するようになる、男性ホルモンが低くなる)か研究した論文はほとんどありません。
最近クロムが多嚢胞性卵巣症候群の体質改善に効果があるという論文を見かけたのでご紹介します。
クロムと多嚢胞性卵巣症候群
クロムとは
クロム(正式にはクロミウム)は生命の維持に欠かせない必須ミネラルのひとつです。
クロムの主な働きはインスリンの働きを助けるということです。多嚢胞性卵巣症候群のひとはインスリンの働きが悪いのでしたね。クロムによってインスリンの働きが良くなると多嚢胞性卵巣症候群の体質が改善します。
クロムは他にも、脂肪の代謝に働いて、血液中の中性脂肪やコレステロール値を正常に保つ働きがあります。
クロムが多く含まれている食品は、海藻・バジル・穀物・豆類・きのこ類など多くの食品があります。1日の必要量は35μgくらいなので、普通に食事をしていれば十分に摂取することが可能です。ビタミンCと一緒に食べると吸収が良くなります。
多嚢胞性卵巣症候群の体質改善効果
多嚢胞性卵巣症候群のひとがクロムのサプリメントを2ヶ月くらい飲むと
- BMIが低くなる(平均2.37低下)
- テストステロンが低くなる(平均0.52pg/ml低下)
- 空腹時のインスリンが低くなる(平均0.86mIU/ml低下)
という結果の出た研究があります。
耐糖能異常がある場合、インシュリンが働きにくいので、空腹時でも膵臓がインスリンを働かせようとしてインスリンを多く産生します。。
ほとんどの論文でクロムのサプリメントは1日200μg使われています。
多嚢胞性卵巣症候群にひとがクロムのサプリを飲むと排卵しやすくなる?
多嚢胞性卵巣症候群のひとがクロミッドを使っても排卵しなかった場合、メトホルミンという糖尿病の薬を飲みながらクロミッドを使うと排卵しやすくなるのでしたね。
クロミッドで排卵しない場合にクロムを併用した時と、メトホルミンを併用した時で排卵率(45%くらい)、妊娠率(20%くらい)ともに差がないとう論文があります
この論文は症例数がそれほど多くないのでまだ信頼性は高くないですが、クロムが糖尿病薬であるメトホルミンと同じ効果がある可能性がありそうです。
クロムの方がメトホルミンより腹痛・吐き気・下痢などの副作用が少ないので、クロムの方がよいのではないかと結論づけています。
まとめ
多嚢胞性卵巣症候群の排卵誘発の補助にメトホルミンを使うのは産婦人科医の間で広く知れ渡っています。クロムはメトホルミンと同じ効果があるかもしれないということはあまり知られていないと思います。
クロムの体質改善の効果はある程度信頼性のあるデーターで証明されています。排卵・妊娠への効果はまだ十分なデーターではありませんが、効果はありそうな印象です。
追記 最近ではイノシトール(ミオイノシトール)を使った論文が多く出ています。
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