多嚢胞性卵巣症候群と生活習慣病
以前から多嚢胞性卵巣症候群は肥満のある人が多いと言われていて、1993年にできた診断基準には肥満が入っていました。
欧米では肥満の合併率が高いのですが、日本ではそれほどでもなかったので(20%くらい)、2007年に改定された診断基準からは肥満がなくなりました。
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多嚢胞性卵巣症候群は妊娠できるけど注意が必要
多嚢胞性卵巣症候群といわれたら 「妊活を始めたけれど、生理不順でうまくタイミングが合わせられない」 そんな時、産婦人科を受診すると、 先生から「多嚢胞性卵巣症候群なので排卵がうまくいかないようです …
この記事で多嚢胞性卵巣症候群は体質みたいなものと書きましたが、この体質の人は将来生活習慣病になるリスクがあると考えられています。
今回は多嚢胞性卵巣症候群と生活習慣病の関係について解説します。
糖尿病予備軍
多嚢胞性卵巣症候群の人は血糖や尿糖に異常がなくても、精密検査をすると3割くらいが耐糖能異常(インスリン抵抗性)という糖尿病予備軍であると言われています。この割合は報告によって大きく違っていて50%以上に耐糖能異常があるという報告もあります。
耐糖能異常(インスリン抵抗性)
耐糖能異常の場合の排卵誘発
耐糖能異常があることが多嚢胞性卵巣症候群の原因のひとつとなっていると考えられるので、耐糖能異常に対する治療をすると多嚢胞性卵巣症候群の体質が改善して排卵しやすくなると考えられています。
耐糖能異常をよくする薬とはすなわち糖尿病の薬です。メトホルミンという薬が使われます。
メトホルミンを使うのは
多嚢胞性卵巣症候群でクロミッドを使っても排卵しない人で、肥満もしくは耐糖能検査で異常があった場合にメトホルミンを飲みながらクロミッドで排卵誘発する方法を試してみます。
メトホルミンは妊娠するまで毎日飲み続けるのが基本です。
メトホルミンで排卵するようになるか
クロミッドで排卵しなかった人でも、メトホルミンを飲みながらクロミッドを使うと50%以上の人が排卵するという報告が多くあります。
メトホルミンを内服する時に注意すること
メトホルミン以外にも
多嚢胞性卵巣症候群の人がイノシトール(ミオイノシトール)を飲むと、空腹時のインスリンの濃度が低くなるなどの、耐糖能異常の改善が認められるという論文が続けて出たため、イノシトールが注目されています。
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【ミオール】多嚢胞性卵巣症候群の人が妊娠しやすくなると多くの論文で報告されているイノシトールが入った葉酸サプリです【産婦人科医が解説】
イノシトールが入った葉酸サプリが国内メーカーから販売されました イノシトールは、多嚢胞性卵巣症候群の人の症状の「排卵しにくい」「男性ホルモンが高くなる」「糖尿病予備軍の体質」などを改善すると多くの論 …
多嚢胞性卵巣症候群の人は糖尿病予備軍なのか
多嚢胞性卵巣症候群の場合、肥満がある人が多い(20%くらい)ので、当然将来糖尿病になる人の率が高くなることになります。だたし、肥満率は20%くらいとすると、上に書いたように耐糖能異常の人は30%以上なので、肥満でなくても糖尿病予備軍の人がいるということになります。
実際に、多嚢胞性卵巣症候群の人はそうでない人と比べて、将来糖尿病になる可能性が3~10倍だという報告があります。
また、妊娠糖尿病といって妊娠している間に糖尿病を発症する人がいるのですが、多嚢胞性卵巣症候群の人はそうでない人と比べて2倍妊娠糖尿病になりやすいというデーターがあります。
糖尿病になるのを予防する方法は
多嚢胞性卵巣症候群で耐糖能に異常がある人は将来糖尿病になる可能性が高いのであれば、そうなる前に予防したいと思いますよね。メトホルミンなどの薬を飲み続けると将来糖尿病になるのを予防できるのかということは、ちゃんとしたデーターがないのでわかっていません。現時点では薬を使って予防するというのは通常行われていません。
食事・運動などのライフスタイルの改善が大事だと考えられます。
糖尿病以外の生活習慣病
高血圧
多嚢胞性卵巣症候群の人はそうでない人と比べて将来高血圧になる可能性が2~10倍高いといわれています。
コレステロール
多嚢胞性卵巣症候群の人はそうでない人と比べて将来コレステロールが高くなる可能性が1.5倍くらい高いといわれています。
まとめ
糖尿病、高血圧、高コレステロールなどの生活習慣病は将来の動脈硬化→脳卒中・心筋梗塞というおそろしい病気の原因となります。食事や運動などのライフスタイルの改善を心がけましょう。
この記事ででてきたいろいろな可能性の数字は報告により違いが大きいものもあります。肥満がある場合には当然生活習慣病のリスクが高くなりますが、肥満がない多嚢胞性卵巣症候群の場合どのくらいリスクが高くなるかはまだはっきりわかっていません。