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フェマーラは乳癌に使われる薬ですが、多嚢胞性卵巣症候群の排卵誘発にクロミッドより効果があるかも?

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フェマーラは多嚢胞性卵巣症候群の排卵誘発の第一選択になるか

 フェマーラ、正式名はレトロゾール、はもともと乳癌に使われる薬です。

 乳癌の薬といっても、細胞を殺すわけではなくて、女性ホルモン(エストロゲン)に影響する薬なので、以前から多嚢胞性卵巣症候群でクロミッドを使っても排卵しない人などに試されていました。

 最近の研究では、クロミッドよりも排卵効果が高いという論文が多くなっています。

 にもかかわらず、多嚢胞性卵巣症候群の排卵誘発の第一選択はクロミッドのままです。

 この辺の事情も含めて、フェマーラについて解説します。

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なぜ排卵誘発の効果があるのか

フェマーラの働き

 フェマーラはアロマターゼ阻害剤と呼ばれる薬のひとつです。

 アロマターゼはエストロゲンを合成するのに必要な酵素なので、アロマターゼが阻害されるとエストロゲンが作られなくなります。

 乳癌は女性ホルモンの働きで増えることが多いので、エストロゲンを作らなくするアロマターゼ阻害剤が乳癌の薬として使われているのです。

フェマーラの排卵誘発作用

 血液の中のエストロゲンが少なくなると、脳下垂体はそれを感知して、エストロゲンを増やそうとFSHの分泌を増やします

 FSHは卵胞の発育を刺激するホルモンでしたね。このメカニズムで排卵が起きると考えられています。

クロミッド VS フェマーラ

 2000年くらいから多嚢胞性卵巣症候群の排卵誘発にフェマーラが使われるようになりました。初めはクロミッドでうまく排卵しない人にフェマーラを試すことが多かったようです。

 クロミッドを6回くらい使っても排卵しなかった人が、フェマーラを使ったら50%くらいの人が排卵したというデータもあって、フェマーラはクロミッドより効果があるのではないかと考えられるようになりました。

 その後、最初からフェマーラを使うのと、クロミッドを使うのでどちらが効果があるかというのが研究されるようになりました。

 2014年に医学会で最も権威があるニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスンという雑誌に論文が発表されました。

  症例数 生児獲得率 排卵率 流産率 双胎率
クロミッド 376 27.5% 61.7% 31.8% 3.4%
フェマーラ 374 19.1% 48.3% 29.1% 7.4%

フェマーラの方が、生児獲得率・排卵率が高くて、流産率・ふたごになる率は変わらないという結論です。

 2015年に発表された、多くの論文をまとめた研究では、フェマーラを使った人906人、クロミッドを使った人927人を比較して、フェマーラを使った人の方が生児獲得率が1.55倍だったと報告しています。

 

子宮内膜への影響

 クロミッドはエストロゲンが子宮内膜を厚くするのをじゃまするので、クロミッドを長く使っていると子宮内膜が薄いままになって、排卵しても受精卵が着床しにくくなります。

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 フェマーラは飲むのをやめた後は、速やかにエストロゲンが増えて子宮内膜を厚くするので、子宮内膜への影響は少ないと考えらえれています。

 クロミッドは飲むのをやめてもしばらく体内に残っているのですが、フェマーラは飲むのをやめるとすぐに体内から消えるのが特徴です。

 実際に、フェマーラを使った時の方がクロミッドを使った時よりも子宮内膜が厚いという論文が多いです。

 クロミッドを長く使って子宮内膜が薄くなってしまった人に、フェマーラを使うと子宮内膜は厚くなったという論文もあります。

 子宮内膜への影響がないことが、フェマーラが生児獲得率(妊娠率)が高いことのひとつの理由だと考えられます。

肥満のある人にも効果がある?

 多嚢胞性卵巣症候群と肥満には関係があるとされています。

 クロミッドは肥満がある人には効きにくいとされていますが、フェマーラは肥満の人(BMIが30以上)と肥満のない人(BMIが30未満)の人で、人工授精の時に使った場合に、妊娠率は肥満の人の方がよかったという論文があります。

 症例数が少ないのではっきりとは言えませんが、フェマーラは肥満の人でも効果が期待できるのかもしれません。

フェマーラの使い方

 ふつうは、生理の3日目から1日1錠2.5mgを5日間内服します。生理の2~5日目の間から初めることもありますし、1日2錠にすることもあります。

 最初にお話ししたように、フェマーラは乳癌の薬なので排卵誘発に使う時には保険が通りません。薬の値段は1錠548円です。ジェネリックだと半額くらいです。

フェマーラの副作用

 乳癌に使う時のようにずっと毎日飲むわけではなくて、5日間飲むだけなので、大きな副作用は起こりにくいと考えられますが、ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスンの論文によると。

 エストロゲンが少なくなるためのほてりが20%、だるさが21%、めまいが12%あったということです。

 クトミッドの方がほてりが多く、フェマーラの方がだるさ・めまいが多いようです。

 乳癌の薬ということで赤ちゃんへの影響が心配になるかと思いますが、先天異常の発生率はクロミッドと変わらないという報告が多いです。

 排卵・受精をする前に飲んでいるだけなので、体内からすぐ消えることを考えると、赤ちゃんに影響する可能性は低いと考えらえれます。

なぜフェマーラが第一選択になっていないのか

 論文ではフェマーラの方が排卵率や妊娠率が高そうなのに、実際にはクロミッドの方が使われているのが現状です。

 みなさんも最初にクロミッドを処方された人が多いと思います。

 なぜでしょうか?

  • フェマーラは保険適応になっていないので使いにくい
  • もともと乳癌の薬だから使うのに抵抗がある
  • 自分で使ったことがないので効果に疑問がある
  • とりあえずクロミッドでいい

などが理由だと思います。

 おそらく、しばらくはフェマーラを使うのはクロミッドで排卵しない時という病院が多いと思います。

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