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産婦人科専門医による妊活ガイド

妊活を始める前に必要なこと 〜風疹にかかったことありますか?

更新日:

風疹根絶を目標に国を挙げて取り組まれていますが、まだ気をつけてください

 妊活を考えているみさなんは、妊娠中に風疹にかかると良くないということは、なんとなく知っていると思います。

 でも、詳しいことはわかなないという人も多いと思います。無駄な心配はしなくていいように、そして赤ちゃんを守るために必要な風疹の知識を解説します。

 2018年8月頃からまた風疹が流行しています。アメリカの疾病対策センターは、日本で風疹が流行しているとして、予防接種や過去の感染歴がない妊婦は日本に渡航しないよう勧告を出しています。

 この記事を読めば、妊娠している時の風疹のことがよくわかると思います。

風疹にかかったことはありますか

 「風疹にかかったことはありますか?」と聞かれても、わからない人も多いと思います。親に聞いて間違いなくかかったことがあると言われればまず大丈夫です。

 風疹にかかったことがあるか?

 まずは風疹てどんな病気か確認しておきましょう。

風疹の症状

  1. 発熱
  2. 全身に広がる発疹(ピンク〜赤い小さいもの)
  3. 首や耳の後ろのグリグリ(リンパ節腫脹

が三大症状と言われています。他にかぜのような症状もあります。

 発熱の程度はさまざまで、半分くらいの人は発熱がありません。

 発疹は顔から体・手足へと広がって、3日くらいでなくなります。なので風疹は3日ばしかとも呼ばれていますね。

 風疹にかかっても症状がほとんどない人が15~30%いると言われているので、かかった覚えがなくても、実際にはかかっている可能性があります。

風疹はどのようにうつるのか

 風疹は飛沫感染なので、唾液のしぶきなどからうつります。発疹が出る7日前くらいから、発疹が出た後7日間くらい周りの人にうつる可能性があります。

 感染力は、はしか(麻疹)よりは弱いですが、インフルエンザよりはずっと強いです。

 感染すると2~3週間の潜伏期間の後、発症します。

 症状が出る前からうつる可能性があるし、症状が出ない人もいるので、風疹に感染している人だとはわからずに接触して、知らない間にうつってしまう可能性があります。

診断と治療

 典型的な3大症状があれば診断できますが、似たような症状を示す感染症もあるので、確定診断には採血で抗体検査をする必要があります。

 インフルエンザのタミフルのような治療薬はないので、解熱剤などの対症療法で、自然に良くなるのを待つしかありません。

実際に風疹はどのくらいはやっているの?

 2012年から2013年にかけて風疹の大流行があって話題になりましたね。

 これは、過去の風疹予防接種の状況が関係していたと言われています。

 大流行の時には、特に黄色の年代の人が風疹にかかりました。

 この年代の人は今でも風疹にかかる可能性のある人が多いということです。

 女性では今(2017年)27~38歳くらい、男性では27~55歳くらいのひとになります。ちょうど妊活をしている年齢層に当たると思われます。

 もちろん、その前後の年齢の人でも、大流行の時に風疹にかかった人がいるので、安心というわけではありません。

最近の風疹のはやり具合は?

 2013年には14,000人以上の人が風疹にかかりました。最近のはやり具合はどうでしょうか。

 

 2017年は11月15日までで81人です。2013年の大流行の後は、少なくなってきています。地域的には関東に多いようです。ただし、人口あたりにすると関東が特別多いわけではありません。

 男性が51人、女性が30人で、年齢は特にかたよりはありません。

 国内で感染したと推定されるケースが多いです。海外では東南アジアでの感染が多いです。

妊活前に知っておきたい先天性風疹症候群

 妊娠中に風疹にかかると良くないということはなんとなくわかっていも、ではどうすればいいのか、わからない人も多いと思います。

妊娠中のどの時期に風疹にかかると良くないのか

 妊娠週数と先天性風疹症候群発症のリスクには相関があります。

 二つの論文のデータをグラフにしてみました。リスクの%は論文によってかなり違っていますが、妊娠週数が進むにつれてリスクは低くなっていきます。

 生理が始まった日から12日以内に発症した感染の場合には、先天性風疹症候群発症のリスクはありません。妊娠20週以後の感染もリスクはないと言われています。

先天性風疹症候群の症状

 先天性風疹症候群になるとどんな症状が出るのでしょうか。

 目・耳・心臓の異常が三大症状です。

 妊娠8週までの感染では三大症状すべてを持つことが多いですが、それ以後の感染では難聴と網膜症だけになることが多いです。

妊婦健診の最初の検査で風疹抗体を検査します

 厚生労働省は妊婦健診で実施するべき検査として

妊娠初期に1回(血液型(ABO血液型・Rh血液型、不規則抗体)、血算、血糖、B型肝炎抗原、C型肝炎抗体、HIV抗体、 梅毒血清反応、風疹ウイルス抗体)

を指定しています。大部分の市町村で妊娠初期に公費として行われています。

 風疹ウイルス抗体にもいろいろあるのですが、妊娠初期の検査では風疹HI抗体というのを調べます。結果は何倍という単位の数字ででます。2の倍数の数字(8倍未満,8倍,16倍,32倍,64倍,128倍,256倍など)しかありません。

  • 16倍以下    風疹にかかる可能性がある
  • 32~128倍  風疹にかかる心配がない
  • 256倍以上 もしかして今風疹にかかっているかも

 16倍以下の人は風疹にかかる可能性があるので、

  1. 20週になるまでは人ごみや子供の多い場所を避ける
  2. 同居している家族に風疹ワクチンを接種してもらう
  3. 産後に次の妊娠に備えて風疹ワクチンを接種する

などの対応が必要になります。

 次の妊娠を考えていない場合でも、抗体が低い人は風疹感染の予防のためにワクチン接種がススメられています。

 256倍以上の人は抗体が高いので、最近風疹にかかった可能性があります。

 昔風疹にかかった人でも抗体が高いままの人もいて、妊娠初期の検査で約17%が256倍以上だったという報告もあります。なので256倍以上でも必ずしも最近風疹にかかったというわけではありません。

 最近の風疹感染が疑われる場合は、1~2週間後にもう一度検査をして抗体が高くなっていれば風疹感染の可能性が高いということになります。同時に感染初期に高くなる別の抗体(IgM抗体)を調べて参考にすることもあります。

 風疹患者との接触や、発疹・発熱・リンパ節腫脹などの症状が重要で、その地域に風疹の流行がなくて、患者との接触・症状がなければ、HI抗体が256倍以上でも再検査は必要ないという意見が多いです。

妊娠中
妊娠初期検査で風疹抗体が8倍でした。二人目も考えているのでお産の後にワクチンを打とうと思うのですが、いつ打てばいいのですか?
産婦人科医
お産した後早めにワクチンを打つのが勧められています。授乳中でも問題あありません。産後の入院中でもOKです。ただし、妊娠高血圧症候群などの妊娠合併症があった場合は、それが落ち着いてから接種しましょう。

風疹ワクチンについて 〜効果・副作用は

 ワクチンには風疹単独のワクチンと風疹・麻疹混合ワクチンがあります。麻疹(はしか)は成人では抗体保有率が90%以上ですが、抗体を持っていない人もいるます。麻疹も合わせて予防できるので、混合ワクチンを勧めているところも多いです。

 妊娠中に麻疹にかかっても、赤ちゃんへの影響はほとんどありませんが、流産・早産になる可能性があります。また、麻疹が重症化すれば、高熱・肺炎・肝機能障害などになってしまうかもしれません。なので、妊娠中に麻疹にかからないようにしましょう。 

 費用は、風疹単独ワクチンが5,000~7,000円、混合ワクチンが8,000~10,000円くらいです。保険適応ではないので病院によって違います。費用を補助している自治体もあります。

風疹ワクチンの効果

 風疹ワクチンは1回接種すると95%以上の人に抗体ができると言われています。

 ワクチンの効果が出るのは2週間から1ヶ月なので、1ヶ月たてば効果が出ていると考えていいです。

 いつまで効果が続くかは人によりますが、15~20年くらいは効果があります。

 風疹ワクチンは生ワクチンなので、妊娠中は打つことができません。

 ワクチンを打った後は2ヶ月間避妊することが勧めらてています。ただし、ワクチンを打った後で妊娠がわかったり、避妊に失敗して2ヶ月以内に妊娠したとしても、先天性風疹症候群を発症したという報告はないので、あまり心配ないと思われます。

 ちなみに男性がワクチンを打っても避妊の必要はありません。

ワクチンの副作用

 どんなワクチンでも言えることですが、まれに(0.1%以下)打った後30分以内に重症なアレルギー反応が起きることがあります。

 接種直後から数日中に、発疹・かゆみ・じんましんなどの過敏症状が出ることがあります。

 発熱・発疹・リンパ節腫脹・関節痛などの風疹感染様の症状が出ることがありますが(5%以下)、数日でなくなります。

 風疹ワクチンは比較的副作用が少ないワクチンと言われています。

実際に妊活前にどうすればいいの?

風疹にかかったことがなく、風疹ワクチンを打ったこともない人

 ワクチンを打ちましょう。

風疹にかかったことがあるかわからない人・風疹ワクチンを打ったことがあるかわからない人(確信がない場合はここになります)

 採血検査で風疹の抗体があるかを確認します。

 抗体が32倍以上であれば心配ありません。抗体が16倍以下なら、妊娠する前にワクチンを打つことがススメられます。

風疹にかかったことがある人

 抗体を持っていると考えられますが、まれに抗体が消えて再感染することがあります。また、風疹にかかったと思っていても、実際は似たような他の病気で、風疹の抗体はなかったということもかなりの頻度であると言われています。

 採血検査で風疹であると確定診断されいたのでなければ、本当に風疹にかかったことがあるのか確認するために抗体検査を考えてください。

風疹ワクチンを打ったことがある人

 風疹ワクチンの効果は20年くらい続くとも言われていますが、正式なデータがあるわけではないので確実なことは言えません。もちろん個人差があります。

 ワクチンを打って何年以内なら大丈夫ということも言えないのですが、ほとんどの人はワクチンを打ってから10年以上たっていると思うので、心配なら抗体検査を考えてください。

男性(配偶者)も

 男性は女性よりもワクチンを打っていない可能性が高いです。二人の赤ちゃんを守るために、風疹にかかった・ワクチンを打ったというのが確実でなければ、ワクチンを打つことをオススメします。

とりあえずワクチンを打っておく

 風疹にかかったことがあるのか、風疹のワクチンを打ったことがあるのかはっきりわからない人も多いとおもいます。また、風疹にかかったことがある・ワクチンを打ったことがあるとうい人でも、抗体がなくなってしまっていることがあるとお話ししました。

 心配なら抗体検査をして、抗体がなければワクチンを打つというのが王道ですが、いちいち採血で抗体検査をするのは面倒だという人は、とりあえずワクチンを打つといのでもいいと思います。抗体を持っている人がワクチンを打っても、特に副作用が強くなることはないと言われています。

ワクチン打たなくてもいいかな

  • 妊娠初期の検査で抗体が低かった人が産後に
  • 風疹にかかったかわらないし、ワクチンを打ったかもわからない人

は、ワクチンを打つことをオススメします。

 風疹にかかったことがある人・ワクチンを打ったことがある人は多分大丈夫です。最近はほとんど風疹が発生していないので、感染するリスクも少ないです。メリット・デメリット考えて、抗体検査・ワクチンをするか決めてください。

 今は風疹がはやっていなくても、突然大流行する可能性があります。大流行している場合は、抗体検査・ワクチンをした方がいいです。

 厚生労働省としては、大流行が起きないようにするため、というより風疹が発生しないようにするために、積極的なワクチン接種を推奨しています。

抗体検査・ワクチン接種どこでする

 妊娠を希望する女性やその夫が、風疹抗体検査や風疹ワクチン接種を希望した場合、抗体検査は無料・ワクチン接種は補助金が出る自治体が多いです。

 お住いの自治体のホームページで確認してみてください。補助金で実施してくれる医療機関のリストも載っていると思います。

まとめ

妊活の前に

  • 風疹にかかったことがあるかわからない
  • 風疹ワクチンを打ったことがあるかわからない
  • 風疹の抗体があるか不安 

なら、抗体検査を受けて、必要ならワクチンを接種してください。

 いきなりワクチン接種でもかまわないと思います。

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