ロシア製ワクチンはアデノウイルスベクターワクチンでアストラゼネカのワクチンと同じ種類
ロシア製の新型コロナウイルスワクチン『スプートニクV』の効果・安全性の論文が、権威ある雑誌『ランセット』に掲載されて、プーチン大統領もご満悦のようです。
ファイザー社などのワクチンの日本への供給が遅れているようなので、今後ロシア製のワクチンの輸入もあるかもしれません。価格が安いのを売りにしているようです。
ロシア製ワクチンはアデノウイルスベクターワクチンというタイプのワクチンで、イギリスのアストラゼネカ社のワクチンと同じタイプのものです。
アデノウイルスベクターワクチンとはどういうものなのか・ランセットに掲載されたロシア製ワクチンの効果・安全性について解説します。
アデノウイルスベクターワクチンとは
アデノウイルスにはいろんなタイプ(型)があって、夏風邪・プール熱・流行り目などの原因となっています。
新型コロナウイルスのDNAの一部だけを入れたアデノウイルスを作って、人の細胞に感染させると、細胞の中で新型コロナウイルスのタンパクが作られて、このタンパクに免疫が反応して新たな感染を予防します。
このアデノウイルスは、これ以上増えて感染を広げることはできないようになっています。
一部のDNAしかないので、もちろん新型コロナウイルスに感染することもありません。
実際にエボラウイルスのワクチンとしてアデノウイルスベクターワクチン使われています。特別な副作用は報告されていないようです。
2~8度の冷蔵庫で保存が可能なのがメリットです。
アデノウイルスベクターワクチンの問題点
アデノウイルスにすでに感染したことがあって免疫を持っている人がいます。そのような人にアデノウイルスベクターワクチンワクチンを注射すると、免疫がアデノウイルスベクターを攻撃してしまって、効果が出ない可能性があります。
アストラゼネカ社のアデノウイルスベクターワクチンは、チンパンジーのアデノウイルスを使っているので、人で免疫を持っている人がいないので効果に問題はありません。
ロシア製のアデノウイルスベクターワクチンは1回目にアデノウイルス26型、2回目にアデノウイルス5型を使うことで、両方感染したことがある人以外には効果が期待できます。
アデノウイルスベクターワクチンの副反応として『発熱, 悪寒, 筋肉痛, 頭痛, 倦怠感』といった風邪様の症状が強く出ることがあります。アデノウイルスに対する免疫反応でこのような症状が出るのかもしれません。
アストラゼネカ社のワクチンもドイツでこのような症状が問題になっていました。
ロシア製のワクチンの効果
ファイザー社やモデルナ社と同じようなグラフですね。
1回目のワクチン接種後26日目以後に新型コロナウイルスのPCRが陽性となったのが
- プラセボ群 4902人中62人 1.3%
- ワクチン群 14964人中16人 0.1%
有効率は91.6%でした。
1回目のワクチン接種後26日目以後に中〜重症の感染になったのが
- プラセボ群 4902人中20人 0.4%
- ワクチン群 14964人中0人 0%
有効率は100%でした。
ファイザー社やモデルナ社のワクチンと同等の効果を認めています。
ロシア製ワクチンのリスク
副反応についてはあまり詳しく報告されていません。
重症の副反応が出たのが
- プラセボ群 5435人中23人 0.4%
- ワクチン群 16427人中45人 0.3%
ですが、重症な副反応は脳梗塞・心筋梗塞・感染症などで、ワクチンと関連した副反応とは考えられないと言っています。
ファイザー社やモデルナ社のワクチンでまれに出るアナフィラキシーショックは報告されていません。
妊活中・妊娠中の安全性は?
妊娠反応がマイナスなのを確認してからワクチンを接種しているので、妊婦に接種したデータはありません。
エボラウイルスのアデノウイルスベクターワクチンは、アフリカで妊婦に対する接種が行われていますが、安全性に関するデータはまだ発表されていません。
まとめ
アデノウイルスベクターワクチンはエボラウイルスなどを予防するワクチンとして、すでに実際に使われています。
効果は、ファイザー社やモデルナ社のワクチンと同じくらいなようです。
臨床試験ではワクチンによる重症な副反応はほとんどないようです。風邪様症状が強めに出る可能性があります。
妊娠中の安全性は、理論的にはリスクは低いと考えられますが、実際のデータはまだありません。