子宮内膜を厚くするのはなかなか難しいですが、いろいろな方法が試されています
子宮内膜が薄いと(7mm以下)妊娠しにくいとお話ししました。
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子宮内膜の厚さと体外受精の妊娠率との関係
子宮内膜が薄いと妊娠しにくいのでしょうか 体外受精の排卵誘発中に超音波をした時に、「卵胞が何個か大きくなったのでHCGを注射して採卵しましょう。ただし、子宮内膜が薄いので、すぐに胚移植はしないで、全 …
子宮内膜が薄くて妊娠しない時に、それを厚くする方法はあるのでしょうか。不妊治療の中でなかなか良い治療法がないもののひとつです。
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卵胞ホルモン療法
子宮内膜は卵胞ホルモンの働きで厚くなってきます。なので、子宮内膜を厚くするために卵胞ホルモンを使うのはかなり前から行われていました。
自然周期では卵胞ホルモンは生理の後だんだん増えていって、排卵の時には200~400pg/mlになります。卵胞ホルモンが高くなれば、どんどん子宮内膜が厚くなるのでしょうか。
体外受精で排卵誘発をして卵胞が10個くらい育つと、卵胞ホルモンは2000pg/ml以上になります。だからといって子宮内膜が異常に厚くなるわけではありません。なので、卵胞ホルモンを大量に飲めば子宮内膜が厚くなるということはないようです。
卵胞ホルモンによる治療は、長期に飲む方法が主流となっています。
卵胞ホルモン長期内服の効果
排卵の時に子宮内膜が8mm未満だった人に、生理の2日目から卵胞ホルモンを長期に内服してもらった研究があります。
子宮内膜が8mm以上になるまで、ずっと内服します。3ヶ月たっても8mm以上にならない場合は、いったん黄体ホルモンを注射して生理を起こして、また卵胞ホルモンを再開します。
93%の人が目標である子宮内膜8mm以上を達成しました。8mm以上になるのに平均95日かかっています。子宮内膜が8mm以上になったら、黄体ホルモンを注射して生理を起こして、その後体外受精などを行ったところ、56%の人が妊娠したそうです。
私の病院では以前2~4週間くらい卵胞ホルモンを使ってみましたが、あまり効果はありませんでした。長期に使えば効果があるのかもしれませんね。でも、3ヶ月も使い続けるというのはどうなのでしょうか。日本でこの方法を使っている病院はあまりないと思います。
血行改善
子宮内膜が薄い人は、子宮内膜への血行が悪いというデーターがあるので、血行を良くする薬が試されています。
血行を良くする薬として、ビタミンE、アスピリン、バイアグラ膣錠などが使われています。
この中ではバイアグラ膣錠がある程度効果がありそうですが、症例数の少ない報告が少しあるだけなので、効果のほどはまだわかりません。
G-CSF
G-CSFとは骨髄で白血球を作るのに働いている物質です。抗がん剤治療で白血球が少なくなった時にこれを注射して白血球を増やします。
11個の論文をまとめた報告によると、子宮内膜が7mm以下の人にG-CSFを子宮の中に注入すると、子宮内膜は明らかに厚くなって、妊娠率は2倍くらいになるとしています。
現在、子宮内膜を厚くする方法として最も多くの論文があって、効果が認められているのがこの方法です。
ただし、G-CSFは高価で、子宮内膜を厚くするというのに保険適応はないので、日本で実際に行なっている病院はあまりないと思います。
高濃度血小板液(PRP)
高濃度血小板液は、しわ治療に使われているようです。採血した血を遠心分離して高濃度血小板液を作ります。
これを子宮の中に注入します。子宮内膜が7mm以下だった10人が全員7mm以上になって、4人が妊娠したという報告があります。
これも、少数の報告があるだけなので、実際の効果はまだわまりません。
まとめ
子宮内膜が薄い人の治療にはとても苦労します。
卵胞ホルモンを使うことが多いですが、短期間ではあまり効果が出ないことが多いです。
G-CSFを子宮の中に注入する方法が、論文も多く効果がありそうですね。ただし、特殊な薬なので、まだ一般的に行われてはいません。