子宮動脈塞栓をしても子供を作るのは可能でしょうか
手術以外の子宮筋腫の治療法として、子宮動脈塞栓があります。子宮に行く動脈をつめてしまって、筋腫に行く血行をなくして筋腫をくさらせて小さくするという方法です。
子宮動脈をつめてしまったら子宮もダメになってしまうのでは? その後の妊娠はどうなるのか。心配ですよね。
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子宮動脈塞栓とは
子宮動脈塞栓の適応
一般的には、生理が重くて痛み止めでも対応できない・貧血が進む、大きくて圧迫感があるなど症状が強くて治療が必要な状態で、手術をしたくない場合が適応となります。
手術と比べたメリットはあるのでしょうか?
- お腹に傷がつかない
- 多数の筋腫があっても、小さなものも含めてもすべての筋腫に効果が期待できる
- 子宮の周りに強い癒着があっても行える
- 将来妊娠しても帝王切開を考える必要がない
などが子宮動脈塞栓のメリットとして考えられます。
手術をした場合には、子宮に傷がつくので、分娩の時に子宮破裂のリスクが出てきます。なので、子宮筋腫の術後は最初から予定で帝王切開をすることも多いです。
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子宮動脈塞栓をしてはいけない場合
以下のような時には子宮動脈塞栓はできません。
◦子宮の壁から飛び出して根元が細くなっている状態の粘膜下筋腫・漿膜下筋腫
筋腫がくさった時に根元がちぎれて筋腫がお腹の中に落ちてしまう可能性があります。
◦子宮に悪性の腫瘍がある時
◦妊娠中
言うまでもないですね。
◦子宮やその周りに感染がある時
感染が悪化します。
◦甲状腺機能亢進症・腎機能障害
塞栓の時使う造影剤が悪影響を与えます。
あとひとつ注意しなければならないのが、GnRHアゴニストを使っていた時です。
筋腫の治療としてGnRHアゴニストを使うことがあります。GnRHアゴニストを使っている間は生理がこなくなり、筋腫が小さくなるので、使うのをやめて生理が来た時も楽になっていることが多いです。ただし、GnRHアゴニストを使うのをやめると筋腫はまた大きくなっていきます。
GnRHアゴニストを使うと、子宮への血行が悪くなっていることが多いので、子宮動脈をつめることによる効果が期待できなくなってしまいます。使い終わってから3ヶ月くらいは間を開ける必要があります。
子宮動脈塞栓の副作用・合併症
痛み
塞栓した後、半日くらいは子宮の部分にかなりの痛みが出ることが多いです。硬膜外麻酔や麻薬系の痛み止めが必要になることがあります。
心筋梗塞で心臓の血行が悪くなると胸がとても苦しくなるのと同じですね。
感染
まれですが、くさった筋腫に感染が起こると抗生剤が効きにくくて子宮摘出が必要になることがあります。
子宮の壁や内膜への影響
正常な子宮の部分は他からの血行があるのでくさることはないと説明しましたが、非常に稀ですが(1%以下)、子宮の壁や内膜が損傷することがあります。
子宮動脈以外の血管がつまってしまう
血管をつめる塞栓物質がもれて他の血管をつめてしまうことにより、下半身の皮膚の損傷・膀胱損傷・直腸損傷・神経損傷などが起こることがありますが、これも非常にまれなことです。
足の付け根のカテーテルを入れたところの出血
塞栓が終わってカテーテルを抜いた後は、そこを長い間強く圧迫して止血します。後になってから再出血したり、圧迫によって足の静脈に血栓ができてしまうことがあります。
子宮動脈塞栓の実際
足の付け根の動脈に針を刺してカレーテルを入れます。造影剤をながしてレントゲンで確認しながらカテーテルの先を子宮動脈の入り口まで進めます。そこから塞栓物質(血管をつめる物資)を流し込んで、子宮動脈をつめてしまします。左右の子宮動脈をつめることによって筋腫への血行がなくなって筋腫が小さくなります。
子宮動脈塞栓の効果
85~90%の人が、生理が重い・圧迫などの症状が良くなって、普段の生活が楽になります。
コクラン・レビューのデータによると、治療して5年たっても85%以上の人が治療の成果に満足していて、満足度は手術をした人と変わらないということです。
治療後3ヶ月くらいで、筋腫の大きさは半分くらいになることが多く、また大きくなることは少ないとされています。
子宮動脈塞栓とその後の妊娠
正常な子宮の部分は子宮動脈以外からの血行もあるので、時間がたつと他からの血行が増えて血行は元どおりになると考えられています。
子宮動脈塞栓の妊娠への悪影響として考えられることとしては
- 子宮内膜の状態が悪くなって着床ににくくなる・流産しやすくなる
- 子宮の壁が硬くなって流産・早産しやすくなる
- 卵巣の血行も悪くなって卵巣の機能に影響する
などが考えられます。
病院によっては妊娠を考えている人には子宮動脈塞栓をしないというところもあると思います。
子宮動脈塞栓の卵巣予備能への影響
子宮動脈塞栓をすると多少なりとも卵巣への血行にも影響する可能性があるので、卵巣予備能への影響が懸念されます。
卵巣予備能といえばAMHですね。
40歳以下の人で子宮動脈塞栓前後でのAMHの値の変化を調べた論文があります。
子宮動脈塞栓前のAMHの平均値が2.54ng/mL、子宮動脈塞栓6ヶ月後のAMHの平均値が2.33ng/mLと多少低下しますが、大きな影響はないとしています。40歳以下の人の場合は子宮動脈塞栓による卵巣予備能の低下はあまり心配しなくてもいいと結論しています。
一方で、40歳以上の人の場合は、卵巣予備能が低くなる可能性を考えなければならないとされています。
子宮動脈塞栓後の妊娠
コクラン・レビューのデーターによると、筋腫を手術で治療した人と比べて、子宮動脈塞栓をした人は、生児獲得率が半分以下(47.5%→19.0%)になっていました。十分なデーターではないので結論づけるのは早いとしていますが、妊娠しにくくなる可能性があると思います。
他にも、流産率が高くなる・産後出血が多くなるなどの可能性が指摘されています。
子宮動脈塞栓の場合、手術のように子宮に傷がつかないので初めから帝王切開を考える必要はないと説明しましたが、結局はいろいろな理由で3分の2くらいは帝王切開になっているようです。
まとめ
子宮動脈塞栓は子宮筋腫の治療としては、手術と同じくらいの効果が期待できます。ただし、独自の合併症には注意が必要です。
子宮動脈塞栓後の妊娠については、まだ結論は出ていませんが、妊娠しにくくなる可能性が考えられます。ですので、妊娠の希望がある場合は、子宮動脈塞栓は避けた方が無難だと思います。
筋腫の数が非常に多い場合、癒着などで手術が難しい強い場合などには、子宮動脈塞栓も選択肢になると思います。